第1章

1:1 さて、ヨシュアの死後、イスラエル人は主に伺って言った。「だれが私たちのために最初に上って行って、カナン人と戦わなければならないでしょうか。」
1:2 すると、主は仰せられた。「ユダが上って行かなければならない。見よ。わたしは、その地を彼の手に渡した。」
1:3 そこで、ユダは自分の兄弟シメオンに言った。「私に割り当てられた地に私といっしょに上ってください。カナン人と戦うのです。私も、あなたに割り当てられた地にあなたといっしょに行きます。」そこでシメオンは彼といっしょに行った。
1:4 ユダが上って行ったとき、主はカナン人とペリジ人を彼らの手に渡されたので、彼らはベゼクで一万人を打った。
1:5 彼らはベゼクでアドニ・ベゼクに出会ったとき、彼と戦ってカナン人とペリジ人を打った。
1:6 ところが、アドニ・ベゼクが逃げたので、彼らはあとを追って彼を捕え、その手足の親指を切り取った。
1:7 すると、アドニ・ベゼクは言った。「私の食卓の下で、手足の親指を切り取られた七十人の王たちが、パンくずを集めていたものだ。神は私がしたとおりのことを、私に報いられた。」それから、彼らはアドニ・ベゼクをエルサレムに連れて行ったが、彼はそこで死んだ。
1:8 また、ユダ族はエルサレムを攻めて、これを取り、剣の刃でこれを打ち破り、町に火をつけた。
1:9 その後、ユダ族は山地やネゲブや低地に住んでいるカナン人と戦うために下って行った。
1:10 ユダはヘブロンに住んでいるカナン人を攻めた。ヘブロンの名は以前はキルヤテ・アルバであった。彼らはシェシャイとアヒマンとタルマイを打ち破った。
1:11 ユダはそこから進んでデビルの住民を攻めた。デビルの名は以前はキルヤテ・セフェルであった。
1:12 そのときカレブは言った。「キルヤテ・セフェルを打って、これを取る者には、私の娘アクサを妻として与えよう。」
1:13 ケナズの子で、カレブの弟オテニエルがそれを取ったので、カレブは娘アクサを彼に妻として与えた。
1:14 彼女がとつぐとき、オテニエルは彼女をそそのかして、畑を父に求めることにした。彼女がろばから降りたので、カレブは彼女に、「何がほしいのか。」と尋ねた。
1:15 アクサは彼に言った。「どうか私に祝いの品を下さい。あなたはネゲブの地に私を送るのですから、水の泉を私に下さい。」そこでカレブは、上の泉と下の泉とを彼女に与えた。
1:16 モーセの義兄弟であるケニ人の子孫は、ユダ族といっしょに、なつめやしの町からアラデの南にあるユダの荒野に上って行って、民とともに住んだ。
1:17 ユダは兄弟シメオンといっしょに行って、ツェファテに住んでいたカナン人を打ち、それを聖絶し、その町にホルマという名をつけた。
1:18 ついで、ユダはガザとその地域、アシュケロンとその地域、エクロンとその地域を攻め取った。
1:19 主がユダとともにおられたので、ユダは山地を占領した。しかし、谷の住民は鉄の戦車を持っていたので、ユダは彼らを追い払わなかった。
1:20 彼らはモーセが約束したとおり、ヘブロンをカレブに与えたので、カレブはその所からアナクの三人の息子を追い払った。
1:21 ベニヤミン族はエルサレムに住んでいたエブス人を追い払わなかったので、エブス人は今日までベニヤミン族といっしょにエルサレムに住んでいる。
1:22 ヨセフの一族もまた、ベテルに上って行った。主は彼らとともにおられた。
1:23 ヨセフの一族はベテルを探った。この町の名は以前はルズであった。
1:24 見張りの者は、ひとりの人がその町から出て来るのを見て、その者に言った。「この町の出入口を教えてくれないか。私たちは、あなたにまことを尽くすから。」
1:25 彼が町の出入口を教えたので、彼らは剣の刃でこの町を打った。しかし、その者とその氏族の者全部は自由にしてやった。
1:26 そこで、その者はヘテ人の地に行って、一つの町を建て、その名をルズと呼んだ。これが今日までその名である。
1:27 マナセはベテ・シェアンとそれに属する村落、タナクとそれに属する村落、ドルの住民とそれに属する村落、イブレアムの住民とそれに属する村落、メギドの住民とそれに属する村落は占領しなかった。それで、カナン人はその土地に住みとおした。
1:28 イスラエルは、強くなってから、カナン人を苦役に服させたが、彼らを追い払ってしまうことはなかった。
1:29 エフライムはゲゼルの住民カナン人を追い払わなかった。それで、カナン人はゲゼルで彼らの中に住んだ。
1:30 ゼブルンはキテロンの住民とナハラルの住民を追い払わなかった。それで、カナン人は彼らの中に住み、苦役に服した。
1:31 アシェルはアコの住民や、シドンの住民や、またマハレブ、アクジブ、ヘルバ、アフェク、レホブの住民を追い払わなかった。
1:32 そして、アシェル人は、その土地に住むカナン人の中に住みついた。彼らを追い払わなかったからである。
1:33 ナフタリはベテ・シェメシュの住民やベテ・アナテの住民を追い払わなかった。そして、その土地に住むカナン人の中に住みついた。しかし、ベテ・シェメシュとベテ・アナテの住民は、彼らのために苦役に服した。
1:34 エモリ人はダン族を山地のほうに圧迫した。エモリ人は、なにせ、彼らの谷に降りて来ることを許さなかった。
1:35 こうして、エモリ人はハル・ヘレスと、アヤロンと、シャアルビムに住みとおした。しかし、ヨセフの一族が勢力を得るようになると、彼らは苦役に服した。
1:36 エモリ人の国境はアクラビムの坂から、セラを経て、上のほうに及んだ。

第2章

2:1 さて、主の使いがギルガルからボキムに上って来て言った。「わたしはあなたがたをエジプトから上らせて、あなたがたの先祖に誓った地に連れて来て言った。『わたしはあなたがたとの契約を決して破らない。
2:2 あなたがたはこの地の住民と契約を結んではならない。彼らの祭壇を取りこわさなければならない。』ところが、あなたがたはわたしの声に聞き従わなかった。なぜこのようなことをしたのか。
2:3 それゆえわたしは言う。『わたしはあなたがたの前から彼らを追い出さない。彼らはあなたがたの敵となり、彼らの神々はあなたがたにとってわなとなる。』」
2:4 主の使いがこれらのことばをイスラエル人全体に語ったとき、民は声をあげて泣いた。
2:5 それで、その場所の名をボキムと呼んだ。彼らはその場所で主にいけにえをささげた。
2:6 ヨシュアが民を送り出したので、イスラエル人はそれぞれ地を自分の相続地として占領するために出て行った。
2:7 民は、ヨシュアの生きている間、また、ヨシュアのあとまで生き残って主がイスラエルに行なわれたすべての大きなわざを見た長老たちの生きている間、主に仕えた。
2:8 主のしもべ、ヌンの子ヨシュアは百十歳で死んだ。
2:9 人々は彼を、エフライムの山地、ガアシュ山の北にある彼の相続の地境ティムナテ・ヘレスに葬った。
2:10 その同世代の者もみな、その先祖のもとに集められたが、彼らのあとに、主を知らず、また、主がイスラエルのためにされたわざも知らないほかの世代が起こった。
2:11 それで、イスラエル人は主の目の前に悪を行ない、バアルに仕えた。
2:12 彼らは、エジプトの地から自分たちを連れ出した父祖の神、主を捨てて、ほかの神々、彼らの回りにいる国々の民の神々に従い、それらを拝み、主を怒らせた。
2:13 彼らが主を捨てて、バアルとアシュタロテに仕えたので、
2:14 主の怒りがイスラエルに向かって燃え上がり、主は彼らを略奪者の手に渡して、彼らを略奪させた。主は回りの敵の手に彼らを売り渡した。それで、彼らはもはや、敵の前に立ち向かうことができなかった。
2:15 彼らがどこへ出て行っても、主の手が彼らにわざわいをもたらした。主が告げ、主が彼らに誓われたとおりであった。それで、彼らは非常に苦しんだ。
2:16 そのとき、主はさばきつかさを起こして、彼らを略奪する者の手から救われた。
2:17 ところが、彼らはそのさばきつかさにも聞き従わず、ほかの神々を慕って淫行を行ない、それを拝み、彼らの先祖たちが主の命令に聞き従って歩んだ道から、またたくまにそれて、先祖たちのようには行なわなかった。
2:18 主が彼らのためにさばきつかさを起こされる場合は、主はさばきつかさとともにおられ、そのさばきつかさの生きている間は、敵の手から彼らを救われた。これは、圧迫し、苦しめる者のために彼らがうめいたので、主があわれまれたからである。
2:19 しかし、さばきつかさが死ぬと、彼らはいつも逆戻りして、先祖たちよりも、いっそう堕落して、ほかの神々に従い、それに仕え、それを拝んだ。彼らはその行ないや、頑迷な生き方を捨てなかった。
2:20 それで、主の怒りがイスラエルに向かって燃え上がった。主は仰せられた。「この民は、わたしが彼らの先祖たちに命じたわたしの契約を破り、わたしの声に聞き従わなかったから、
2:21 わたしもまた、ヨシュアが死んだとき残していた国民を、彼らの前から一つも追い払わない。
2:22 彼らの先祖たちが主の道を守って歩んだように、彼らもそれを守って歩むかどうか、これらの国民によってイスラエルを試みるためである。」
2:23 こうして、主はこれらの国民をただちに追い出さないで、残しておき、ヨシュアの手に渡されなかったのである。

第3章

3:1 カナンでの戦いを少しも知らないすべてのイスラエルを試みるために、主が残しておかれた国民は次のとおり。
3:2 ——これはただイスラエルの次の世代の者、これまで戦いを知らない者たちに、戦いを教え、知らせるためである。——
3:3 すなわち、ペリシテ人の五人の領主と、すべてのカナン人と、シドン人と、バアル・ヘルモン山からレボ・ハマテまでのレバノン山に住んでいたヒビ人とであった。
3:4 これは、主がモーセを通して先祖たちに命じた命令に、イスラエルが聞き従うかどうか、これらの者によってイスラエルを試み、そして知るためであった。
3:5 イスラエル人は、カナン人、ヘテ人、エモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の間に住んで、
3:6 彼らの娘たちを自分たちの妻にめとり、また自分たちの娘を彼らの息子たちに与え、彼らの神々に仕えた。
3:7 こうして、イスラエル人は、主の目の前に悪を行ない、彼らの神、主を忘れて、バアルやアシェラに仕えた。
3:8 それで、主の怒りがイスラエルに向かって燃え上がり、主は彼らをアラム・ナハライムの王クシャン・リシュアタイムの手に売り渡された。こうして、イスラエル人は、八年の間、クシャン・リシュアタイムに仕えた。
3:9 イスラエル人が主に叫び求めたとき、主はイスラエル人のために、彼らを救うひとりの救助者、カレブの弟ケナズの子オテニエルを起こされた。
3:10 主の霊が彼の上にあった。彼はイスラエルをさばき、戦いに出て行った。主はアラムの王クシャン・リシュアタイムを彼の手に渡された。それで彼の勢力はクシャン・リシュアタイムを押えた。
3:11 こうして、この国は四十年の間、穏やかであった。その後、ケナズの子オテニエルは死んだ。
3:12 そうすると、イスラエル人はまた、主の目の前に悪を行なった。彼らが主の目の前に悪を行なったので、主はモアブの王エグロンを強くして、イスラエルに逆らわせた。
3:13 エグロンはアモン人とアマレク人を集め、イスラエルを攻めて打ち破り、彼らはなつめやしの町を占領した。
3:14 それで、イスラエル人は十八年の間、モアブの王エグロンに仕えた。
3:15 イスラエル人が主に叫び求めたとき、主は彼らのために、ひとりの救助者、ベニヤミン人ゲラの子で、左ききのエフデを起こされた。イスラエル人は、彼を通してモアブの王エグロンにみつぎものを送った。
3:16 エフデは長さ一キュビトの、一振りのもろ刃の剣を作り、それを着物の下の右ももの上の帯にはさんだ。
3:17 こうして、彼はモアブの王エグロンにみつぎものをささげた。エグロンは非常に太っていた。
3:18 みつぎものをささげ終わったとき、エフデはみつぎものを運んで来た者たちを帰らせ、
3:19 彼自身はギルガルのそばの石切り場から戻って来て言った。「王さま。私はあなたに秘密のお知らせがあります。」すると王は、「今、言うな。」と言った。そこで、王のそばに立っていた者たちはみな、彼のところから出て行った。
3:20 エフデは王のところへ行った。そのとき、王はひとりで涼しい屋上の部屋に座していた。エフデが、「私にあなたへの神のお告げがあります。」と言うと、王はその座から立ち上がった。
3:21 このとき、エフデは左手を伸ばして、右ももから剣を取り出し、王の腹を刺した。
3:22 柄も刃も、共にはいってしまった。彼が剣を王の腹から抜かなかったので、脂肪が刃をふさいでしまった。エフデは窓から出て、
3:23 廊下へ出て行き、王のいる屋上の部屋の戸を閉じ、かんぬきで締めた。
3:24 彼が出て行くと、王のしもべたちがやって来た。そして見ると、屋上の部屋にかんぬきがかけられていたので、彼らは、「王はきっと涼み部屋で用をたしておられるのだろう。」と思った。
3:25 それで、しもべたちはいつまでも待っていたが、王が屋上の部屋の戸をいっこうにあけないので、かぎを取ってあけると、なんと、彼らの主人は床の上に倒れて死んでいた。
3:26 エフデはしもべたちが手間取っている間にのがれて、石切り場の所を通り過ぎ、セイラにのがれた。
3:27 エフデは行って、エフライムの山地で角笛を吹き鳴らした。すると、イスラエル人は彼といっしょに山地から下って行き、彼はその先頭に立った。
3:28 エフデは彼らに言った。「私を追って来なさい。主はあなたがたの敵モアブ人をあなたがたの手に渡された。」それで、彼らはエフデのあとについて下って行き、モアブへのヨルダン川の渡し場を攻め取って、ひとりも渡らせなかった。
3:29 このとき彼らは約一万人のモアブ人を打った。彼らはみなたくましい、力ある者たちであったが、ひとりも助からなかった。
3:30 このようにして、モアブはその日イスラエルによって征服され、この国は八十年の間、穏やかであった。
3:31 エフデのあとにアナテの子シャムガルが起こり、牛の突き棒でペリシテ人六百人を打った。彼もまたイスラエルを救った。

第4章

4:1 その後、イスラエル人はまた、主の目の前に悪を行なった。エフデは死んでいた。
4:2 それで、主はハツォルで治めていたカナンの王ヤビンの手に彼らを売り渡した。ヤビンの将軍はシセラで、彼はハロシェテ・ハゴイムに住んでいた。
4:3 彼は鉄の戦車九百両を持ち、そのうえ二十年の間、イスラエル人をひどく圧迫したので、イスラエル人は主に叫び求めた。
4:4 そのころ、ラピドテの妻で女預言者デボラがイスラエルをさばいていた。
4:5 彼女はエフライムの山地のラマとベテルとの間にあるデボラのなつめやしの木の下にいつもすわっていたので、イスラエル人は彼女のところに上って来て、さばきを受けた。
4:6 あるとき、デボラは使いを送って、ナフタリのケデシュからアビノアムの子バラクを呼び寄せ、彼に言った。「イスラエルの神、主はこう命じられたではありませんか。『タボル山に進軍せよ。ナフタリ族とゼブルン族のうちから一万人を取れ。
4:7 わたしはヤビンの将軍シセラとその戦車と大軍とをキション川のあなたのところに引き寄せ、彼をあなたの手に渡す。』」
4:8 バラクは彼女に言った。「もしあなたが私といっしょに行ってくださるなら、行きましょう。しかし、もしあなたが私といっしょに行ってくださらないなら、行きません。」
4:9 そこでデボラは言った。「私は必ずあなたといっしょに行きます。けれども、あなたが行こうとしている道では、あなたは光栄を得ることはできません。主はシセラをひとりの女の手に売り渡されるからです。」こうして、デボラは立ってバラクといっしょにケデシュへ行った。
4:10 バラクはゼブルンとナフタリをケデシュに呼び集め、一万人を引き連れて上った。デボラも彼といっしょに上った。
4:11 ケニ人ヘベルは、モーセの義兄弟ホバブの子孫のカインから離れて、ケデシュの近くのツァアナニムの樫の木のそばで天幕を張っていた。
4:12 一方シセラは、アビノアムの子バラクがタボル山に登った、と知らされたので、
4:13 シセラは鉄の戦車九百両全部と、自分といっしょにいた民をみな、ハロシェテ・ハゴイムからキション川に呼び集めた。
4:14 そこで、デボラはバラクに言った。「さあ、やりなさい。きょう、主があなたの手にシセラを渡される。主はあなたの前に出て行かれるではありませんか。」それで、バラクはタボル山から下り、一万人が彼について行った。
4:15 主がシセラとそのすべての戦車と、すべての陣営の者をバラクの前に剣の刃でかき乱したので、シセラは戦車から飛び降り、徒歩で逃げた。
4:16 バラクは戦車と陣営をハロシェテ・ハゴイムに追いつめた。こうして、シセラの陣営の者はみな剣の刃に倒れ、残された者はひとりもいなかった。
4:17 しかし、シセラは徒歩でケニ人ヘベルの妻ヤエルの天幕に逃げて来た。ハツォルの王ヤビンとケニ人ヘベルの家とは親しかったからである。
4:18 ヤエルはシセラを迎えに出て来て、彼に言った。「お立ち寄りください、ご主人さま。私のところにお立ち寄りください。ご心配には及びません。」シセラが彼女の天幕にはいったので、ヤエルは彼に毛布を掛けた。
4:19 シセラはヤエルに言った。「どうか、水を少し飲ませてください。のどが渇いているから。」ヤエルは乳の皮袋をあけて、彼に飲ませ、また彼をおおった。
4:20 シセラはまた彼女に言った。「天幕の入口に立っていてください。もしだれかが来て、『ここにだれかいないか。』とあなたに尋ねたら、『いない。』と言ってください。」
4:21 だが、ヘベルの妻ヤエルは天幕の鉄のくいを取ると、手に槌を持ってそっと彼のところへ近づき、彼のこめかみに鉄のくいを打ち込んで地に刺し通した。彼は疲れていたので、熟睡していた。こうして彼は死んだ。
4:22 ちょうどその時、バラクがシセラを追って来たので、ヤエルは彼を迎えに出て、言った。「さあ、あなたの捜している人をお見せしましょう。」彼がヤエルのところに来ると、そこに、シセラは倒れて死んでおり、そのこめかみには鉄のくいが刺さっていた。
4:23 こうして神はその日、イスラエル人の前でカナンの王ヤビンを服従させた。
4:24 それから、イスラエル人の勢力がますますカナンの王ヤビンを圧するようになり、ついにカナンの王ヤビンを断ち滅ぼした。

第5章

5:1 その日、デボラとアビノアムの子バラクはこう歌った。
5:2 「イスラエルで髪の毛を乱すとき、民が進んで身をささげるとき、主をほめたたえよ。
5:3 聞け、王たちよ。耳を傾けよ、君主たちよ。私は主に向かって歌う。イスラエルの神、主にほめ歌を歌う。
5:4 主よ。あなたがセイルを出て、エドムの野を進み行かれたとき、大地は揺れ、天もまた、したたり、雲は水をしたたらせた。
5:5 山々は主の前に揺れ動いた。シナイもまた、イスラエルの神、主の前に。
5:6 アナテの子シャムガルのとき、またヤエルのときに、隊商は絶え、旅人はわき道を通った。
5:7 農民は絶えた。イスラエルに絶えた。私、デボラが立ち、イスラエルに母として立つまでは。
5:8 新しい神々が選ばれたとき、城門で戦いがあった。イスラエルの四万人のうちに、盾と槍が見られたであろうか。
5:9 私の心はイスラエルの指導者たちに、民のうちの進んで身をささげる者たちに向かう。主をほめたたえよ。
5:10 黄かっ色のろばに乗る者、さばきの座に座する者、道を歩く者よ。よく聞け。
5:11 水汲み場での、水を汲む者たちの声に。そこで彼らは主の正しいみわざと、イスラエルの主の農民の正しいわざを唱えている。そのとき、主の民は城門におりて来た。
5:12 目ざめよ、目ざめよ。デボラ。目ざめよ、目ざめよ。歌声をあげよ。 起きよ。バラク。とりこを捕えて行け。アビノアムの子よ。
5:13 そのとき、生き残った者は貴人のようにおりて来た。主の民は私のために勇士のようにおりて来た。
5:14 その根がアマレクにある者もエフライムからおりて来た。ベニヤミンはあなたのあとに続いて、あなたの民のうちにいる。指導者たちはマキルからおりて来た。指揮をとる者たちもゼブルンから。
5:15 イッサカルのつかさたちはデボラとともにいた。イッサカルはバラクと同じく歩兵とともに谷の中を突進した。ルベンの支族の間では、心の定めは大きかった。
5:16 なぜ、あなたは二つの鞍袋の間にすわって、羊の群れに笛吹くのを聞いているのか。ルベンの支族の間では、心の秘密は大きかった。
5:17 ギルアデはヨルダン川のかなたに住んでいた。なぜダンは船にとどまったのか。アシェルは海辺にすわり、その波止場のそばに住んでいた。
5:18 ゼブルンは、いのちをも賭して死ぬ民。野の高い所にいるナフタリも、そうである。
5:19 王たちはやって来て、戦った。そのとき、カナンの王たちは、メギドの流れのそばのタナクで戦って、銀の分捕り品を得なかった。
5:20 天からは、星が下って戦った。その軌道を離れて、シセラと戦った。
5:21 キション川は彼らを押し流した。昔からの川、キションの川。私のたましいよ。力強く進め。
5:22 そのとき、馬のひづめは地を踏み鳴らし、その荒馬はけりまくる。
5:23 主の使いは言った。『メロズをのろえ、その住民を激しくのろえ。彼らは主の手助けに来ず、勇士として主の手助けに来なかったからだ。』
5:24 女の中で最も祝福されたのはヤエル、ケニ人ヘベルの妻。天幕に住む女の中で最も祝福されている。
5:25 シセラが水を求めると、ヤエルは乳を与え、高価な鉢で凝乳を勧めた。
5:26 ヤエルは鉄のくいを手にし、右手に職人の槌をかざし、シセラを打って、その頭に打ち込み、こめかみを砕いて刺し通した。
5:27 ヤエルの足もとに彼はひざをつき、倒れて、横たわった。その足もとにひざをつき、倒れた。ひざをついた所で、打ち殺された。
5:28 シセラの母は窓越しに、格子窓越しに外を見おろして嘆いた。『なぜ、あれの車の来るのがおそいのか。なぜ、あれの車の歩みが遅れているのか。』
5:29 知恵のある姫君たちは彼女に答え、彼女も同じことばをくり返した。
5:30 『彼らは分捕り物を見つけ出し、それを分けているのではありませんか。めいめいひとりの勇士にひとりかふたりの娘を。シセラには染めた織物の分捕り物を。染めた織物の分捕り物、色とりどりに刺繍した織物。分捕り物として、首には二枚の刺繍した織物を。』
5:31 主よ。あなたの敵はみな滅び、主を愛する者は、力強く日がさし出るようにしてください。」こうして、この国は四十年の間、穏やかであった。

第6章

6:1 イスラエル人はまた、主の目の前に悪を行なった。そこで、主は七年の間、彼らをミデヤン人の手に渡した。
6:2 こうして、ミデヤン人の勢力はイスラエルを押えたので、イスラエル人はミデヤン人を避けて、山々にある洞窟や、ほら穴や、要害を自分たちのものにした。
6:3 イスラエル人が種を蒔くと、いつでもミデヤン人や、アマレク人や、東の人々が上って来て、イスラエル人を襲った。
6:4 そしてイスラエル人に対して陣を敷き、その地の産物を荒らして、ガザに至るまで、イスラエルに羊や牛やろばのためのえささえも残さなかった。
6:5 彼らが自分たちの家畜と天幕を持って上って来たからである。彼らはいなごの大群のようにしてやって来た。彼らとそのらくだは数えきれないほどであった。しかも、彼らは国を荒らすためにはいって来たのであった。
6:6 それで、イスラエルはミデヤン人のために非常に弱くなっていった。すると、イスラエル人は主に叫び求めた。
6:7 イスラエル人がミデヤン人のために主に叫び求めたとき、
6:8 主はイスラエル人にひとりの預言者を遣わした。預言者は彼らに言った。「イスラエルの神、主はこう仰せられる。わたしはあなたがたをエジプトから上らせ、あなたがたを奴隷の家から連れ出した。
6:9 わたしはあなたがたをエジプト人の手と、すべてあなたがたを圧迫する者の手から助け出し、あなたがたの前から彼らを追い出して、その国をあなたがたに与えた。
6:10 それでわたしはあなたがたに言った。『わたしはあなたがたの神、主である。あなたがたが住んでいる国のエモリ人の神々を恐れてはならない。』ところが、あなたがたはわたしの声に聞き従わなかった。」
6:11 さて主の使いが来て、アビエゼル人ヨアシュに属するオフラにある樫の木の下にすわった。このとき、ヨアシュの子ギデオンはミデヤン人からのがれて、酒ぶねの中で小麦を打っていた。
6:12 主の使いが彼に現われて言った。「勇士よ。主があなたといっしょにおられる。」
6:13 ギデオンはその御使いに言った。「ああ、主よ。もし主が私たちといっしょにおられるなら、なぜこれらのことがみな、私たちに起こったのでしょうか。私たちの先祖たちが、『主は私たちをエジプトから上らせたではないか。』と言って、私たちに話したあの驚くべきみわざはみな、どこにありますか。今、主は私たちを捨てて、ミデヤン人の手に渡されました。」
6:14 すると、主は彼に向かって仰せられた。「あなたのその力で行き、イスラエルをミデヤン人の手から救え。わたしがあなたを遣わすのではないか。」
6:15 ギデオンは言った。「ああ、主よ。私にどのようにしてイスラエルを救うことができましょう。ご存じのように、私の分団はマナセのうちで最も弱く、私は父の家で一番若いのです。」
6:16 主はギデオンに仰せられた。「わたしはあなたといっしょにいる。だからあなたはひとりを打ち殺すようにミデヤン人を打ち殺そう。」
6:17 すると、ギデオンは言った。「お願いです。私と話しておられるのがあなたであるというしるしを、私に見せてください。
6:18 どうか、私が贈り物を持って来て、あなたのところに戻り、御前にそれを供えるまで、ここを離れないでください。」それで、主は、「あなたが戻って来るまで待とう。」と仰せられた。
6:19 ギデオンはうちにはいり、一匹のやぎの子を料理し、一エパの粉で種を入れないパンを作り、その肉をかごに入れ、また吸い物をなべに入れ、樫の木の下にいる方のところに持って来て、供えた。
6:20 すると、神の使いはギデオンに言った。「肉と種を入れないパンを取って、この岩の上に置き、その吸い物を注げ。」それで彼はそのようにした。
6:21 すると主の使いは、その手にしていた杖の先を伸ばして、肉と種を入れないパンに触れた。すると、たちまち火が岩から燃え上がって、肉と種を入れないパンを焼き尽くしてしまった。主の使いは去って見えなくなった。
6:22 これで、この方が主の使いであったことがわかった。それで、ギデオンは言った。「ああ、神、主よ。私は面と向かって主の使いを見てしまいました。」
6:23 すると、主はギデオンに仰せられた。「安心しなさい。恐れるな。あなたは死なない。」
6:24 そこで、ギデオンはそこに主のために祭壇を築いて、これをアドナイ・シャロムと名づけた。これは今日まで、アビエゼル人のオフラに残っている。
6:25 その夜、主はギデオンに仰せられた。「あなたの父の雄牛、七歳の第二の雄牛を取り、あなたの父が持っているバアルの祭壇を取りこわし、そのそばのアシェラ像を切り倒せ。
6:26 そのとりでの頂上に、あなたの神、主のために石を積んで祭壇を築け。あの第二の雄牛を取り、切り倒したアシェラ像の木で全焼のいけにえをささげよ。」
6:27 そこで、ギデオンは、自分のしもべの中から十人を引き連れて、主が言われたとおりにした。彼は父の家の者や、町の人々を恐れたので、昼間それをせず、夜それを行なった。
6:28 町の人々が翌朝早く起きて見ると、バアルの祭壇は取りこわされ、そのそばにあったアシェラ像は切り倒され、新しく築かれた祭壇の上には、第二の雄牛がささげられていた。
6:29 そこで、彼らは互いに言った。「だれがこういうことをしたのだろう。」それから、彼らは調べて、尋ね回り、「ヨアシュの子ギデオンがこれをしたのだ。」と言った。
6:30 ついで、町の人々はヨアシュに言った。「あなたの息子を引張り出して殺しなさい。あれはバアルの祭壇を取りこわし、そばにあったアシェラ像も切り倒したのだ。」
6:31 すると、ヨアシュは自分に向かって立っているすべての者に言った。「あなたがたは、バアルのために争っているのか。それとも、彼を救おうとするのか。バアルのために争う者は、朝までに殺されてしまう。もしバアルが神であるなら、自分の祭壇が取りこわされたのだから、自分で争えばよいのだ。」
6:32 こうして、その日、ギデオンはエルバアルと呼ばれた。自分の祭壇が取りこわされたのだから「バアルは自分で争えばよい。」という意味である。
6:33 ミデヤン人や、アマレク人や、東の人々がみな連合して、ヨルダン川を渡り、イズレエルの谷に陣を敷いた。
6:34 主の霊がギデオンをおおったので、彼が角笛を吹き鳴らすと、アビエゼル人が集まって来て、彼に従った。
6:35 ギデオンはマナセの全域に使者を遣わした。それで彼らもまた呼び集められ、彼に従った。彼はまた、アシェル、ゼブルン、そしてナフタリに使者を遣わしたので、彼らは合流して上って来た。
6:36 ギデオンは神に申し上げた。「もしあなたが仰せられたように、私の手でイスラエルを救おうとされるなら、
6:37 今、私は打ち場に刈り取った一頭分の羊の毛を置きます。もしその羊の毛の上にだけ露が降りていて、土全体がかわいていたら、あなたがおことばのとおりに私の手でイスラエルを救われることが、私にわかります。」
6:38 すると、そのようになった。ギデオンが翌日、朝早く、その羊の毛を押しつけて、その羊の毛から露を絞ると、鉢いっぱいになるほど水が出た。
6:39 ギデオンは神に言った。「私に向かって御怒りを燃やさないでください。私にもう一回言わせてください。どうぞ、この羊の毛でもう一回だけ試みさせてください。今度はこの羊の毛だけがかわいていて、土全体には露が降りるようにしてください。」
6:40 それで、神はその夜、そのようにされた。すなわち、その羊の毛の上だけがかわいていて、土全体には露が降りていた。

第7章

7:1 それで、エルバアル、すなわちギデオンと、彼といっしょにいた民はみな、朝早くハロデの泉のそばに陣を敷いた。ミデヤン人の陣営は、彼の北に当たり、モレの山沿いの谷にあった。
7:2 そのとき、主はギデオンに仰せられた。「あなたといっしょにいる民は多すぎるから、わたしはミデヤン人を彼らの手に渡さない。イスラエルが『自分の手で自分を救った。』と言って、わたしに向かって誇るといけないから。
7:3 今、民に聞こえるように告げ、『恐れ、おののく者はみな帰りなさい。ギルアデ山から離れなさい。』と言え。」すると、民のうちから二万二千人が帰って行き、一万人が残った。
7:4 すると、主はギデオンに仰せられた。「民はまだ多すぎる。彼らを連れて水のところに下って行け。わたしはそこで、あなたのために彼らをためそう。わたしがあなたに、『この者はあなたといっしょに行かなければならない。』と言うなら、その者は、あなたといっしょに行かなければならない。またわたしがあなたに、『この者はあなたといっしょに行ってはならない。』と言う者はだれも、行ってはならない。」
7:5 そこでギデオンは民を連れて、水のところに下って行った。すると、主はギデオンに仰せられた。「犬がなめるように、舌で水をなめる者は残らず別にしておき、また、ひざをついて飲む者も残らずそうせよ。」
7:6 そのとき、口に手を当てて水をなめた者の数は三百人であった。残りの民はみな、ひざをついて水を飲んだ。
7:7 そこで主はギデオンに仰せられた。「手で水をなめた三百人で、わたしはあなたがたを救い、ミデヤン人をあなたの手に渡す。残りの民はみな、それぞれ自分の家に帰らせよ。」
7:8 そこで彼らは民の糧食と角笛を手に取った。こうして、ギデオンはイスラエル人をみな、それぞれ自分の天幕に送り返し、三百人の者だけを引き止めた。ミデヤン人の陣営は、彼から見て下の谷にあった。
7:9 その夜、主はギデオンに仰せられた。「立って、あの陣営に攻め下れ。それをあなたの手に渡したから。
7:10 しかし、もし下って行くことを恐れるなら、あなたに仕える若い者プラといっしょに陣営に下って行き、
7:11 彼らが何と言っているかを聞け。そのあとで、あなたは、勇気を出して、陣営に攻め下らなければならない。」そこで、ギデオンと若い者プラとは、陣営の中の編隊の端に下って行った。
7:12 そこには、ミデヤン人や、アマレク人や、東の人々がみな、いなごのように大ぜい、谷に伏していた。そのらくだは、海辺の砂のように多くて数えきれなかった。
7:13 ギデオンがそこに行ってみると、ひとりの者が仲間に夢の話をしていた。ひとりが言うには、「私は今、夢を見た。見ると、大麦のパンのかたまりが一つ、ミデヤン人の陣営にころがって来て、天幕の中にまではいり、それを打ったので、それは倒れた。ひっくり返って、天幕は倒れてしまった。」
7:14 すると、その仲間は答えて言った。「それはイスラエル人ヨアシュの子ギデオンの剣にほかならない。神が彼の手にミデヤンと、陣営全部を渡されたのだ。」
7:15 ギデオンはこの夢の話とその解釈を聞いたとき、主を礼拝した。そして、イスラエルの陣営に戻って言った。「立て。主はミデヤン人の陣営をあなたがたの手に下さった。」
7:16 そして、彼は三百人を三隊に分け、全員の手に角笛とからつぼとを持たせ、そのつぼの中にたいまつを入れさせた。
7:17 それから、彼らに言った。「私を見て、あなたがたも同じようにしなければならない。見よ。私が陣営の端に着いたら、私がするように、あなたがたもそうしなければならない。
7:18 私と、私といっしょにいる者がみな、角笛を吹いたなら、あなたがたもまた、全陣営の回りで角笛を吹き鳴らし、『主のためだ。ギデオンのためだ。』と言わなければならない。」
7:19 ギデオンと、彼といっしょにいた百人の者が、真夜中の夜番の始まる時、陣営の端に着いた。ちょうどその時、番兵の交替をしたばかりであった。それで、彼らは角笛を吹き鳴らし、その手に持っていたつぼを打ちこわした。
7:20 三隊の者が角笛を吹き鳴らして、つぼを打ち砕き、それから左手にたいまつを堅く握り、右手に吹き鳴らす角笛を堅く握って、「主の剣、ギデオンの剣だ。」と叫び、
7:21 それぞれ陣営の周囲の持ち場に着いたので、陣営の者はみな走り出し、大声をあげて逃げた。
7:22 三百人が角笛を吹き鳴らしている間に、主は、陣営の全面にわたって、同士打ちが起こるようにされた。それで陣営はツェレラのほうのベテ・ハシタや、タバテの近くのアベル・メホラの端まで逃げた。
7:23 イスラエル人はナフタリと、アシェルと、全マナセから呼び集められ、彼らはミデヤン人を追撃した。
7:24 ついで、ギデオンはエフライムの山地全域に使者を送って言った。「降りて来て、ミデヤン人を攻めなさい。ベテ・バラまでの流れと、ヨルダン川を攻め取りなさい。」そこでエフライム人はみな呼び集められ、彼らはベテ・バラまでの流れと、ヨルダン川を攻め取った。
7:25 また彼らはミデヤン人のふたりの首長オレブとゼエブを捕え、オレブをオレブの岩で、ゼエブをゼエブの酒ぶねで殺し、こうしてミデヤン人を追撃した。彼らはヨルダン川の向こう側にいたギデオンのところに、オレブとゼエブの首を持って行った。

第8章

8:1 そのとき、エフライム人はギデオンに言った。「あなたは、私たちに何ということをしたのですか。ミデヤン人と戦いに行ったとき、私たちに呼びかけなかったとは。」こうして彼らはギデオンを激しく責めた。
8:2 ギデオンは彼らに言った。「今、あなたがたのしたことに比べたら、私がいったい何をしたというのですか。アビエゼルのぶどうの収穫よりも、エフライムの取り残した実のほうが、よかったのではありませんか。
8:3 神はあなたがたの手にミデヤン人の首長オレブとゼエブを渡されました。あなたがたに比べたら、私に何ができたのでしょう。」ギデオンがこのことを話すと、そのとき彼らの怒りは和らいだ。
8:4 それからギデオンは、彼に従う三百人の人々とヨルダン川を渡った。彼らは疲れていたが、追撃を続けた。
8:5 彼はスコテの人々に言った。「どうか、私について来ている民にパンを下さい。彼らは疲れているが、私はミデヤン人の王ゼバフとツァルムナを追っているのです。」
8:6 すると、スコテのつかさたちは言った。「ゼバフとツァルムナの手首を、今、あなたは手にしているのでしょうか。私たちがあなたの軍団にパンを与えなければならないなどとは。」
8:7 そこでギデオンは言った。「そういうことなら、主が私の手にゼバフとツァルムナを渡されるとき、私は荒野のいばらやとげで、あなたがたを踏みつけてやる。」
8:8 ギデオンはそこからペヌエルに上って行き、同じように彼らに言った。すると、ペヌエルの人々もスコテの人々が答えたように彼に答えた。
8:9 それでギデオンはまたペヌエルの人々に言った。「私が無事に帰って来たら、このやぐらをたたきこわしてやる。」
8:10 ゼバフとツァルムナはカルコルにいたが、約一万五千からなるその陣営の者も彼らといっしょにいた。これは東の人々の陣営全体のうち生き残った者のすべてであった。剣を使う者十二万人が、すでに倒されていたからである。
8:11 そこでギデオンは、ノバフとヨグボハの東の天幕に住む人々の道に沿って上って行き、陣営を打った。陣営は油断していた。
8:12 ゼバフとツァルムナは逃げたが、ギデオンは彼らを追って、ミデヤンのふたりの王ゼバフとツァルムナを捕え、その全陣営をろうばいさせた。
8:13 それから、ヨアシュの子ギデオンは、ヘレスの坂道を通って戦いから帰って来た。
8:14 そのとき、彼はスコテの人々の中からひとりの若者を捕え、尋問した。すると、彼はギデオンのために、スコテのつかさたちと七十七人の長老たちの名を書いた。
8:15 そこで、ギデオンはスコテの人々のところに行って、言った。「あなたがたが、『ゼバフとツァルムナの手首を、今、あなたは手にしているのか。私たちがあなたに従う疲れた人たちにパンを与えなければならないなどとは。』と言って、私をそしったそのゼバフとツァルムナが、ここにいる。」
8:16 そしてギデオンは、その町の長老たちを捕え、また荒野のいばらや、とげを取って、それでスコテの人々に思い知らせた。
8:17 また彼はペヌエルのやぐらをたたきこわして、町の人々を殺した。
8:18 それから、ギデオンはゼバフとツァルムナに言った。「おまえたちがタボルで殺した人たちは、どこにいるのか。」すると彼らは答えた。「あの人たちは、あなたのような人でした。どの人も王の子たちに似ていました。」
8:19 ギデオンは言った。「彼らは私の兄弟、私の母の息子たちだ。主は生きておられる。おまえたちが彼らを生かしておいてくれたなら、私はおまえたちを殺しはしないのだが。」
8:20 そしてギデオンは自分の長男エテルに「立って、彼らを殺しなさい。」と言ったが、その若者は自分の剣を抜かなかった。彼はまだ若かったので、恐ろしかったからである。
8:21 そこで、ゼバフとツァルムナは言った。「立って、あなたが私たちに撃ちかかりなさい。人の勇気はそれぞれ違うのですから。」すると、ギデオンは立って、ゼバフとツァルムナを殺し、彼らのらくだの首に掛けてあった三日月形の飾りを取った。
8:22 そのとき、イスラエル人はギデオンに言った。「あなたも、あなたのご子息も、あなたの孫も、私たちを治めてください。あなたが私たちをミデヤン人の手から救ったのですから。」
8:23 しかしギデオンは彼らに言った。「私はあなたがたを治めません。また、私の息子もあなたがたを治めません。主があなたがたを治められます。」
8:24 ついで、ギデオンは彼らに言った。「あなたがたに一つ、お願いしたい。ひとりひとり、自分の分捕り物の耳輪を私に下さい。」——殺された者たちはイシュマエル人であったので、金の耳輪をつけていたからである。——
8:25 すると、彼らは「差し上げますとも。」と答えて、一枚の上着を広げ、ひとりひとりその分捕り物の耳輪をその中に投げ込んだ。
8:26 ギデオンが願った金の耳輪の目方は金で一千七百シェケルであった。このほかに、三日月形の飾りや、垂れ飾りや、ミデヤンの王たちの着ていた赤紫の衣、またほかに、彼らのらくだの首の回りに掛けていた首飾りなどもあった。
8:27 ギデオンはそれで、一つのエポデを作り、彼の町のオフラにそれを置いた。すると、イスラエルはみな、それを慕って、そこで淫行を行なった。それはギデオンとその一族にとって、落とし穴となった。
8:28 こうしてミデヤン人はイスラエル人によって屈服させられ、二度とその頭を上げなかった。この国はギデオンの時代、四十年の間、穏やかであった。
8:29 ヨアシュの子エルバアルは帰って自分の家に住んだ。
8:30 ギデオンには彼から生まれた息子が七十人いた。彼には大ぜいの妻がいたからである。
8:31 シェケムにいたそばめもまた、彼にひとりの男の子を産んだ。そこで彼はアビメレクという名をつけた。
8:32 やがて、ヨアシュの子ギデオンは長寿を全うして死に、アビエゼル人のオフラにある父ヨアシュの墓に葬られた。
8:33 ギデオンが死ぬとすぐ、イスラエル人は再びバアルを慕って淫行を行ない、バアル・ベリテを自分たちの神とした。
8:34 イスラエル人は、周囲のすべての敵から自分たちを救い出した彼らの神、主を心に留めなかった。
8:35 彼らは、エルバアルすなわちギデオンがイスラエルに尽くした善意のすべてにふさわしい真実を、彼の家族に尽くさなかった。

第9章

9:1 さて、エルバアルの子アビメレクは、シェケムにいる自分の母の身内の者たちのところに行き、彼らと母の一族の氏族全員に告げて言った。
9:2 「どうかシェケムのすべての者に、よく言って聞かせてください。エルバアルの息子七十人がみなで、あなたがたを治めるのと、ただひとりがあなたがたを治めるのと、あなたがたにとって、どちらがよいか。私があなたがたの骨肉であることを思い起こしてください。」
9:3 アビメレクの母の身内の者たちが、彼に代わって、これらのことをみな、シェケムのすべての者に言って聞かせたとき、彼らの心はアビメレクに傾いた。彼らは「彼は私たちの身内の者だ。」と思ったからである。
9:4 彼らはバアル・ベリテの宮から銀七十シェケルを取り出して彼に与えた。アビメレクはそれで、ごろつきの、ずうずうしい者たちを雇った。彼らはアビメレクのあとについた。
9:5 それから、アビメレクはオフラにある彼の父の家に行って、自分の兄弟であるエルバアルの息子たち七十人を一つの石の上で殺した。しかし、エルバアルの末子ヨタムは隠れていたので生き残った。
9:6 それで、シェケムの者とベテ・ミロの者はみな集まり、出かけて行って、シェケムにある石の柱のそばの樫の木のところで、アビメレクを王とした。
9:7 このことがヨタムに告げられたとき、彼は行って、ゲリジム山の頂上に立ち、声を張り上げ、彼らに叫んで言った。「シェケムの者たち。私に聞け。そうすれば神はあなたがたに聞いてくださろう。
9:8 木々が自分たちの王を立てて油をそそごうと出かけた。彼らはオリーブの木に言った。『私たちの王となってください。』
9:9 すると、オリーブの木は彼らに言った。『私は神と人とをあがめるために使われる私の油を捨て置いて、木々の上にそよぐために出かけなければならないだろうか。』
9:10 ついで、木々はいちじくの木に言った。『来て、私たちの王となってください。』
9:11 しかし、いちじくの木は彼らに言った。『私は、私の甘みと私の良い実を捨て置いて、木々の上にそよぐために出かけなければならないだろうか。』
9:12 それから、木々はぶどうの木に言った。『来て、私たちの王となってください。』
9:13 しかし、ぶどうの木は彼らに言った。『私は、神と人とを喜ばせる私の新しいぶどう酒を捨て置いて、木々の上にそよぐために出かけなければならないだろうか。』
9:14 そこで、すべての木がいばらに言った。『来て、私たちの王となってください。』
9:15 すると、いばらは木々に言った。『もしあなたがたがまことをもって私に油をそそぎ、あなたがたの王とするなら、来て、私の陰に身を避けよ。そうでなければ、いばらから火が出て、レバノンの杉の木を焼き尽くそう。』
9:16 今、あなたがたはまことと真心をもって行動して、アビメレクを王にしたのか。あなたがたはエルバアルとその家族とを、ねんごろに取り扱い、彼のてがらに報いたのか。
9:17 私の父は、あなたがたのために戦い、自分のいのちをかけて、あなたがたをミデヤン人の手から助け出したのだ。
9:18 あなたがたは、きょう、私の父の家にそむいて立ち上がり、その息子たち七十人を、一つの石の上で殺し、女奴隷の子アビメレクをあなたがたの身内の者だからというので、シェケムの者たちの王として立てた。
9:19 もしあなたがたが、きょう、エルバアルと、その家族とにまことと真心をもって行動したのなら、あなたがたはアビメレクを喜び、彼もまた、あなたがたを喜ぶがよい。
9:20 そうでなかったなら、アビメレクから火が出て、シェケムとベテ・ミロの者たちを食い尽くし、シェケムとベテ・ミロの者たちから火が出て、アビメレクを食い尽くそう。」
9:21 それから、ヨタムは逃げ去り、ベエルに行き、兄弟アビメレクを避けてそこに住んだ。
9:22 アビメレクは三年間、イスラエルを支配した。
9:23 神は、アビメレクとシェケムの者たちの間に悪霊を送ったので、シェケムの者たちはアビメレクを裏切った。
9:24 そのためエルバアルの七十人の息子たちへの暴虐が再現し、彼らの血が、彼らを殺した兄弟アビメレクと、アビメレクに加勢して彼の兄弟たちを殺したシェケムの者たちの上に臨んだ。
9:25 シェケムの者たちは、山々の頂上に彼を待ち伏せる者たちを置いたので、彼らは道でそばを過ぎるすべての者を略奪した。やがて、このことがアビメレクに告げられた。
9:26 エベデの子ガアルとその身内の者たちが来て、シェケムを通りかかったとき、シェケムの者たちは彼を信用した。
9:27 そこで彼らは畑に出て行って、ぶどうを収穫して、踏んだ。そして祭りをし、自分たちの神の宮にはいって行って、飲み食いし、アビメレクをののしった。
9:28 そのとき、エベデの子ガアルは言った。「アビメレクとは何者か。シェケムとは何者か。われわれが彼に仕えなければならないとは。アビメレクはエルバアルの子、ゼブルはアビメレクの役人ではないか。シェケムの父ハモルの人々に仕えなさい。なぜわれわれはアビメレクに仕えなければならないのか。
9:29 だれか、この民を私の手に与えてくれないものか。そうすれば私はアビメレクを追い出すのだが。」そして彼はアビメレクに言った。「おまえの軍勢をふやして、出て来い。」
9:30 この町のつかさゼブルは、エベデの子ガアルの言ったことを聞いて、怒りを燃やし、
9:31 トルマにいるアビメレクのところに使者を送って言わせた。「今、エベデの子ガアルとその身内の者たちがシェケムに来ています。今、彼らは町を、あなたにそむかせようとしています。
9:32 今、あなたとあなたとともにいる民は、夜のうちに立って、野で待ち伏せなさい。
9:33 朝早く、太陽が上るころ、町に突入しなさい。すると、ガアルと、彼とともにいる民は、あなたに向かって出て来るでしょう。あなたは好機をつかんで、彼らを攻撃することができます。」
9:34 そこでアビメレクと、彼とともにいた民はみな、夜のうちに立って、四隊に分かれてシェケムに向かって待ち伏せた。
9:35 エベデの子ガアルが出て来て、町の門の入口に立ったとき、アビメレクと、彼とともにいた民は、待ち伏せしていた所から立ち上がった。
9:36 ガアルはその民を見て、ゼブルに言った。「あれ、山々の頂から民が降りて来る。」すると、ゼブルは彼に言った。「あなたは、山々の影が人のように見えるのです。」
9:37 ガアルはまた言った。「いや。人々がこの地の一番高い所から降りて来る。また一隊がメオヌニムの樫の木のほうから来る。」
9:38 すると、ゼブルは彼に言った。「『アビメレクとは何者か。われわれが彼に仕えなければならないとは。』と言ったあなたの口は、いったいどこにあるのですか。あなたが見くびったのは、この民ではありませんか。さあ、今、出て行って、彼と戦いなさい。」
9:39 そこで、ガアルはシェケムの者たちの先頭に立って出て行き、アビメレクと戦った。
9:40 アビメレクが彼を追ったので、ガアルは彼の前から逃げた。そして多くの者が刺し殺されて倒れ、門の入口にまで及んだ。
9:41 アビメレクはアルマにとどまったが、ゼブルは、ガアルとその身内の者たちを追い払って、彼らをシェケムに住ませなかった。
9:42 翌日、民は、野に出かけて行って、アビメレクに告げた。
9:43 そこで、アビメレクは自分の民を引き連れて、それを三隊に分け、野で待ち伏せた。すると、民が町から出て来るのが見えたので、彼らを襲って打った。
9:44 アビメレクと、彼とともにいた一隊は突入して、町の門の入口に立った。一方、他の二隊は野にいたすべての者を襲って、打ち殺した。
9:45 アビメレクはその日、一日中、町で戦い、この町を攻め取り、そのうちにいた民を殺し、町を破壊して、そこに塩をまいた。
9:46 シェケムのやぐらの者たちはみな、これを聞いて、エル・ベリテの宮の地下室にはいって行った。
9:47 シェケムのやぐらの者たちがみな集まったことがアビメレクに告げられたとき、
9:48 アビメレクは、自分とともにいた民とツァルモン山に登って行った。アビメレクは手に斧を取って、木の枝を切り、これを持ち上げて、自分の肩に載せ、共にいる民に言った。「私がするのを見たとおりに、あなたがたも急いでそのとおりにしなさい。」
9:49 それで民もまた、みなめいめい枝を切って、アビメレクについて行き、それを地下室の上に置き、火をつけて、地下室を焼いた。それでシェケムのやぐらの人たち、男女約一千人もみな死んだ。
9:50 それから、アビメレクはテベツに行き、テベツに対して陣を敷き、これを攻め取った。
9:51 この町の中に、一つ、堅固なやぐらがあった。すべての男、女、この町の者たちはみなそこへ逃げて、立てこもり、やぐらの屋根に上った。
9:52 そこで、アビメレクはやぐらのところまで行って、これと戦い、やぐらの戸に近づいて、それを火で焼こうとした。
9:53 そのとき、ひとりの女がアビメレクの頭にひき臼の上石を投げつけて、彼の頭蓋骨を砕いた。
9:54 アビメレクは急いで道具持ちの若者を呼んで言った。「おまえの剣を抜いて、私を殺してくれ。女が殺したのだと私のことを人が言わないように。」それで、若者が彼を刺し通したので、彼は死んだ。
9:55 イスラエル人はアビメレクが死んだのを見たとき、ひとりひとり自分のところへ帰った。
9:56 こうして神は、アビメレクが彼の兄弟七十人を殺して、その父に行なった悪を、彼に報いられた。
9:57 神はシェケムの人々のすべての悪を彼らの頭上に報いられた。こうしてエルバアルの子ヨタムののろいが彼らに実現した。

第10章

10:1 さて、アビメレクの後、イスラエルを救うために、イッサカル人、ドドの子プワの息子トラが立ち上がった。彼はエフライムの山地にあるシャミルに住んだ。
10:2 彼は、二十三年間、イスラエルをさばいて後、死んでシャミルに葬られた。
10:3 彼の後にギルアデ人ヤイルが立ち上がり、二十二年間、イスラエルをさばいた。
10:4 彼には三十人の息子がいて、三十頭のろばに乗り、三十の町を持っていたが、それは今日まで、ハボテ・ヤイルと呼ばれ、ギルアデの地にある。
10:5 ヤイルは死んでカモンに葬られた。
10:6 またイスラエル人は、主の目の前に重ねて悪を行ない、バアルや、アシュタロテ、アラムの神々、シドンの神々、モアブの神々、アモン人の神々、ペリシテ人の神々に仕えた。こうして彼らは主を捨て、主に仕えなかった。
10:7 主の怒りはイスラエルに向かって燃え上がり、彼らをペリシテ人の手とアモン人の手に売り渡された。
10:8 それで彼らはその年、イスラエル人を打ち砕き、苦しめた。彼らはヨルダン川の向こう側のギルアデにあるエモリ人の地にいたイスラエル人をみな、十八年の間、苦しめた。
10:9 アモン人がヨルダン川を渡って、ユダ、ベニヤミン、およびエフライムの家と戦ったとき、イスラエルは非常な苦境に立った。
10:10 そのとき、イスラエル人は主に叫んで言った。「私たちは、あなたに罪を犯しました。私たちの神を捨ててバアルに仕えたのです。」
10:11 すると、主はイスラエル人に仰せられた。「わたしは、かつてエジプト人、エモリ人、アモン人、ペリシテ人から、あなたがたを救ったではないか。
10:12 シドン人、アマレク人、マオン人が、あなたがたをしいたげたが、あなたがたがわたしに叫んだとき、わたしはあなたがたを彼らの手から救った。
10:13 しかし、あなたがたはわたしを捨てて、ほかの神々に仕えた。だから、わたしはこれ以上あなたがたを救わない。
10:14 行け。そして、あなたがたが選んだ神々に叫べ。あなたがたの苦難の時には、彼らが救うがよい。」
10:15 すると、イスラエル人は主に言った。「私たちは罪を犯しました。あなたがよいと思われることを何でも私たちにしてください。ただ、どうか、きょう、私たちを救い出してください。」
10:16 彼らが自分たちのうちから外国の神々を取り去って、主に仕えたので、主は、イスラエルの苦しみを見るに忍びなくなった。
10:17 このころ、アモン人が呼び集められ、ギルアデに陣を敷いた。一方、イスラエル人も集まって、ミツパに陣を敷いた。
10:18 ギルアデの民や、その首長たちは互いに言った。「アモン人と戦いを始める者はだれか。その者がギルアデのすべての住民のかしらとなるのだ。」

第11章

11:1 さて、ギルアデ人エフタは勇士であったが、彼は遊女の子であった。エフタの父親はギルアデであった。
11:2 ギルアデの妻も、男の子たちを産んだ。この妻の子たちが成長したとき、彼らはエフタを追い出して、彼に言った。「あなたはほかの女の子だから、私たちの父の家を受け継いではいけない。」
11:3 そこで、エフタは兄弟たちのところから逃げて行き、トブの地に住んだ。すると、エフタのところに、ごろつきが集まって来て、彼といっしょに出歩いた。
11:4 それからしばらくたって、アモン人がイスラエルに戦争をしかけてきた。
11:5 アモン人がイスラエルに戦争をしかけてきたとき、ギルアデの長老たちはトブの地からエフタを連れて来ようと出かけて行き、
11:6 エフタに言った。「来て、私たちの首領になってください。そしてアモン人と戦いましょう。」
11:7 エフタはギルアデの長老たちに言った。「あなたがたは私を憎んで、私の父の家から追い出したではありませんか。あなたがたが苦しみに会ったからといって、今なぜ私のところにやって来るのですか。」
11:8 すると、ギルアデの長老たちはエフタに言った。「だからこそ、私たちは、今、あなたのところに戻って来たのです。あなたが私たちといっしょに行き、アモン人と戦ってくださるなら、あなたは、私たちギルアデの住民全体のかしらになるのです。」
11:9 エフタはギルアデの長老たちに言った。「もしあなたがたが、私を連れ戻して、アモン人と戦わせ、主が彼らを私に渡してくださったら、私はあなたがたのかしらになりましょう。」
11:10 ギルアデの長老たちはエフタに言った。「主が私たちの間の証人となられます。私たちは必ずあなたの言われるとおりにします。」
11:11 エフタがギルアデの長老たちといっしょに行き、民が彼を自分たちのかしらとし、首領としたとき、エフタは自分が言ったことをみな、ミツパで主の前に告げた。
11:12 それから、エフタはアモン人の王に使者たちを送って、言った。「あなたは私と、どういうかかわりがあって、私のところに攻めて来て、この国と戦おうとするのか。」
11:13 すると、アモン人の王はエフタの使者たちに答えた。「イスラエルがエジプトから上って来たとき、アルノン川からヤボク川、それにヨルダン川に至るまでの私の国を取ったからだ。だから、今、これらの地を穏やかに返してくれ。」
11:14 そこで、エフタは再びアモン人の王に使者たちを送って、
11:15 彼に、エフタはこう言うと言わせた。「イスラエルはモアブの地も、アモン人の地も取らなかった。
11:16 イスラエルは、エジプトから上って来たとき、荒野を通って葦の海まで行き、それからカデシュに来た。
11:17 そこで、イスラエルはエドムの王に使者たちを送って、言った。『どうぞ、あなたの国を通らせてください。』ところが、エドムの王は聞き入れなかった。イスラエルはモアブの王にも使者たちを送ったが、彼も好まなかった。それでイスラエルはカデシュにとどまった。
11:18 それから、彼らは荒野を行き、エドムの地とモアブの地を回って、モアブの地の東に来て、アルノン川の向こう側に宿営した。しかし、モアブの領土にははいらなかった。アルノンはモアブの領土だったから。
11:19 そこでイスラエルは、ヘシュボンの王で、エモリ人の王シホンに使者たちを送って、彼に言った。『どうぞ、あなたの国を通らせて、私の目的地に行かせてください。』
11:20 シホンはイスラエルを信用せず、その領土を通らせなかったばかりか、シホンは民をみな集めてヤハツに陣を敷き、イスラエルと戦った。
11:21 しかし、イスラエルの神、主が、シホンとそのすべての民をイスラエルの手に渡されたので、イスラエルは彼らを打った。こうしてイスラエルはその地方に住んでいたエモリ人の全地を占領した。
11:22 こうして彼らは、アルノン川からヤボク川までと、荒野からヨルダン川までのエモリ人の全領土を占領した。
11:23 今、イスラエルの神、主は、ご自分の民イスラエルの前からエモリ人を追い払われた。それをあなたは占領しようとしている。
11:24 あなたは、あなたの神ケモシュがあなたに占領させようとする地を占領しないのか。私たちは、私たちの神、主が、私たちの前から追い払ってくださる土地をみな占領するのだ。
11:25 今、あなたはモアブの王ツィポルの子バラクよりもまさっているのか。バラクは、イスラエルと争ったことがあるのか。彼らと戦ったことがあるのか。
11:26 イスラエルが、ヘシュボンとそれに属する村落、アロエルとそれに属する村落、アルノン川の川岸のすべての町々に、三百年間住んでいたのに、なぜあなたがたは、その期間中に、それを取り戻さなかったのか。
11:27 私はあなたに罪を犯してはいないのに、あなたは私に戦いをいどんで、私に害を加えようとしている。審判者である主が、きょう、イスラエル人とアモン人との間をさばいてくださるように。」
11:28 アモン人の王はエフタが彼に送ったことばを聞き入れなかった。
11:29 主の霊がエフタの上に下ったとき、彼はギルアデとマナセを通り、ついで、ギルアデのミツパを通って、ギルアデのミツパからアモン人のところへ進んで行った。
11:30 エフタは主に誓願を立てて言った。「もしあなたが確かにアモン人を私の手に与えてくださるなら、
11:31 私がアモン人のところから無事に帰って来たとき、私の家の戸口から私を迎えに出て来る、その者を主のものといたします。私はその者を全焼のいけにえとしてささげます。」
11:32 こうして、エフタはアモン人のところに進んで行き、彼らと戦った。主は彼らをエフタの手に渡された。
11:33 ついでエフタは、アロエルからミニテに至るまでの二十の町を、またアベル・ケラミムに至るまでを、非常に激しく打った。こうして、アモン人はイスラエル人に屈服した。
11:34 エフタが、ミツパの自分の家に来たとき、なんと、自分の娘が、タンバリンを鳴らし、踊りながら迎えに出て来ているではないか。彼女はひとり子であって、エフタには彼女のほかに、男の子も女の子もなかった。
11:35 エフタは彼女を見るや、自分の着物を引き裂いて言った。「ああ、娘よ。あなたはほんとうに、私を打ちのめしてしまった。あなたは私を苦しめる者となった。私は主に向かって口を開いたのだから、もう取り消すことはできないのだ。」
11:36 すると、娘は父に言った。「お父さま。あなたは主に対して口を開かれたのです。お口に出されたとおりのことを私にしてください。主があなたのために、あなたの敵アモン人に復讐なさったのですから。」
11:37 そして、父に言った。「このことを私にさせてください。私に二か月のご猶予を下さい。私は山々をさまよい歩き、私が処女であることを私の友だちと泣き悲しみたいのです。」
11:38 エフタは、「行きなさい。」と言って、娘を二か月の間、出してやったので、彼女は友だちといっしょに行き、山々の上で自分の処女であることを泣き悲しんだ。
11:39 二か月の終わりに、娘は父のところに帰って来たので、父は誓った誓願どおりに彼女に行なった。彼女はついに男を知らなかった。こうしてイスラエルでは、
11:40 毎年、イスラエルの娘たちは出て行って、年に四日間、ギルアデ人エフタの娘のために嘆きの歌を歌うことがしきたりとなった。

第12章

12:1 エフライム人が集まって、ツァフォンへ進んだとき、彼らはエフタに言った。「なぜ、あなたは、あなたとともに行くように私たちに呼びかけずに、進んで行ってアモン人と戦ったのか。私たちはあなたの家をあなたもろとも火で焼き払う。」
12:2 そこでエフタは彼らに言った。「かつて、私と私の民とがアモン人と激しく争ったとき、私はあなたがたを呼び集めたが、あなたがたは私を彼らの手から救ってくれなかった。
12:3 あなたがたが私を救ってくれないことがわかったので、私は自分のいのちをかけてアモン人のところへ進んで行った。そのとき、主は彼らを私の手に渡された。なぜ、あなたがたは、きょう、私のところに上って来て、私と戦おうとするのか。」
12:4 そして、エフタはギルアデの人々をみな集めて、エフライムと戦った。ギルアデの人々はエフライムを打ち破った。これはエフライムが、「ギルアデ人よ。あなたがたはエフライムとマナセのうちにいるエフライムの逃亡者だ。」と言ったからである。
12:5 ギルアデ人はさらに、エフライムに面するヨルダン川の渡し場を攻め取った。エフライムの逃亡者が、「渡らせてくれ。」と言うとき、ギルアデの人々はその者に、「あなたはエフライム人か。」と尋ね、その者が「そうではない。」と答えると、
12:6 その者に、「『シボレテ』と言え。」と言い、その者が「スィボレテ」と言って、正しく発音できないと、その者をつかまえて、ヨルダン川の渡し場で殺した。そのとき、四万二千人のエフライム人が倒れた。
12:7 こうして、エフタはイスラエルを六年間、さばいた。ギルアデ人エフタは死んで、ギルアデの町に葬られた。
12:8 彼の後に、ベツレヘムの出のイブツァンがイスラエルをさばいた。
12:9 彼には三十人の息子がいた。また彼は三十人の娘を自分の氏族以外の者にとつがせ、自分の息子たちのために、よそから三十人の娘たちをめとった。彼は七年間、イスラエルをさばいた。
12:10 イブツァンは死んで、ベツレヘムに葬られた。
12:11 彼の後に、ゼブルン人エロンがイスラエルをさばいた。彼は十年間、イスラエルをさばいた。
12:12 ゼブルン人エロンは死んで、ゼブルンの地のアヤロンに葬られた。
12:13 彼の後に、ピルアトン人ヒレルの子アブドンがイスラエルをさばいた。
12:14 彼には四十人の息子と三十人の孫がいて、七十頭のろばに乗っていた。彼は八年間、イスラエルをさばいた。
12:15 ピルアトン人ヒレルの子アブドンは死んで、アマレク人の山地にあるエフライムの地のピルアトンに葬られた。

第13章

13:1 イスラエル人はまた、主の目の前に悪を行なったので、主は四十年間、彼らをペリシテ人の手に渡された。
13:2 さて、ダン人の氏族で、その名をマノアというツォルアの出のひとりの人がいた。彼の妻は不妊の女で、子どもを産んだことがなかった。
13:3 主の使いがその女に現われて、彼女に言った。「見よ。あなたは不妊の女で、子どもを産まなかったが、あなたはみごもり、男の子を産む。
13:4 今、気をつけなさい。ぶどう酒や強い酒を飲んではならない。汚れた物をいっさい食べてはならない。
13:5 見よ。あなたはみごもっていて、男の子を産もうとしている。その子の頭にかみそりを当ててはならない。その子は胎内にいるときから神へのナジル人であるからだ。彼はイスラエルをペリシテ人の手から救い始める。」
13:6 その女は夫のところに行き、次のように言った。「神の人が私のところに来られました。その姿は神の使いの姿のようで、とても恐ろしゅうございました。私はその方がどちらから来られたか伺いませんでした。その方も私に名をお告げになりませんでした。
13:7 けれども、その方は私に言われました。『見よ。あなたはみごもっていて、男の子を産もうとしている。今、ぶどう酒や強い酒を飲んではならない。汚れた物をいっさい食べてはならない。その子は胎内にいるときから死ぬ日まで、神へのナジル人であるからだ。』」
13:8 そこで、マノアは主に願って言った。「ああ、主よ。どうぞ、あなたが遣わされたあの神の人をまた、私たちのところに来させてください。私たちが、生まれて来る子に、何をすればよいか、教えてください。」
13:9 神は、マノアの声を聞き入れられたので、神の使いが再びこの女のところに来た。彼女は、畑にすわっており、夫マノアは彼女といっしょにいなかった。
13:10 それで、この女は急いで走って行き、夫に告げて言った。「早く。あの日、私のところに来られたあの方が、また私に現われました。」
13:11 マノアは立ち上がって妻のあとについて行き、その方のところに行って尋ねた。「この女にお話しになった方はあなたなのですか。」その方は言った。「わたしだ。」
13:12 マノアは言った。「今、あなたのおことばは実現するでしょう。その子のための定めとならわしはどのようにすべきでしょうか。」
13:13 すると、主の使いはマノアに言った。「わたしがこの女に言ったことすべてに気をつけなければならない。
13:14 ぶどうの木からできる物はいっさい食べてはならない。ぶどう酒や、強い酒も飲んではならない。汚れた物はいっさい食べてはならない。わたしが彼女に命令したことはみな、守らなければならない。」
13:15 マノアは主の使いに言った。「私たちにあなたをお引き止めできますでしょうか。あなたのために子やぎを料理したいのですが。」
13:16 すると、主の使いはマノアに言った。「たとい、あなたがわたしを引き止めても、わたしはあなたの食物は食べない。もし全焼のいけにえをささげたいなら、それは主にささげなさい。」マノアはその方が主の使いであることを知らなかったのである。
13:17 そこで、マノアは主の使いに言った。「お名まえは何とおっしゃるのですか。あなたのおことばが実現しましたら、私たちは、あなたをほめたたえたいのです。」
13:18 主の使いは彼に言った。「なぜ、あなたはそれを聞こうとするのか。わたしの名は不思議という。」
13:19 そこでマノアは、子やぎと穀物のささげ物を取り、それを岩の上で主にささげた。主はマノアとその妻が見ているところで、不思議なことをされた。
13:20 炎が祭壇から天に向かって上ったとき、マノアとその妻の見ているところで、主の使いは祭壇の炎の中を上って行った。彼らは地にひれ伏した。
13:21 ——主の使いは再びマノアとその妻に現われなかった。——そのとき、マノアは、この方が主の使いであったのを知った。
13:22 それで、マノアは妻に言った。「私たちは神を見たので、必ず死ぬだろう。」
13:23 妻は彼に言った。「もし私たちを殺そうと思われたのなら、主は私たちの手から、全焼のいけにえと穀物のささげ物をお受けにならなかったでしょう。これらのことをみな、私たちにお示しにならなかったでしょうし、いましがた、こうしたことを私たちにお告げにならなかったでしょう。」
13:24 その後、この女は男の子を産み、その名をサムソンと呼んだ。その子は大きくなり、主は彼を祝福された。
13:25 そして、主の霊は、ツォルアとエシュタオルとの間のマハネ・ダンで彼を揺り動かし始めた。

第14章

14:1 サムソンはティムナに下って行ったとき、ペリシテ人の娘でティムナにいるひとりの女を見た。
14:2 彼は帰ったとき、父と母に告げて言った。「私はティムナで、ある女を見ました。ペリシテ人の娘です。今、あの女をめとって、私の妻にしてください。」
14:3 すると、父と母は彼に言った。「あなたの身内の娘たちのうちに、または、私の民全体のうちに、女がひとりもいないというのか。割礼を受けていないペリシテ人のうちから、妻を迎えるとは。」サムソンは父に言った。「あの女を私にもらってください。あの女が私の気に入ったのですから。」
14:4 彼の父と母は、それが主によることだとは知らなかった。主はペリシテ人と事を起こす機会を求めておられたからである。そのころはペリシテ人がイスラエルを支配していた。
14:5 こうして、サムソンは彼の父母とともに、ティムナに下って行き、ティムナのぶどう畑にやって来た。見よ。一頭の若い獅子がほえたけりながら彼に向かって来た。
14:6 このとき、主の霊が激しく彼の上に下って、彼は、まるで子やぎを引き裂くように、それを引き裂いた。彼はその手に何も持っていなかった。サムソンは自分のしたことを父にも母にも言わなかった。
14:7 サムソンは下って行って、その女と話し合った。彼女はサムソンの気に入った。
14:8 しばらくたってから、サムソンは、彼女をめとろうと引き返して来た。そして、あの獅子の死体を見ようと、わき道にはいって行くと、見よ、獅子のからだの中に、蜜蜂の群れと蜜があった。
14:9 彼はそれを手にかき集めて、歩きながら食べた。彼は自分の父母のところに来て、それを彼らに与えたので、彼らも食べた。その蜜を、獅子のからだからかき集めたことは彼らに言わなかった。
14:10 彼の父がその女のところに下って行ったとき、サムソンはそこで祝宴を催した。若い男たちはそのようにするのが常だった。
14:11 人々は、サムソンを見たとき、三十人の客を連れて来た。彼らはサムソンにつき添った。
14:12 サムソンは彼らに言った。「さあ、あなたがたに、一つのなぞをかけましょう。もし、あなたがたが七日の祝宴の間に、それを解いて、私に明かすことができれば、あなたがたに亜麻布の着物三十着と、晴れ着三十着をあげましょう。
14:13 もし、それを私に明かすことができなければ、あなたがたが亜麻布の着物三十着と晴れ着三十着とを私に下さい。」すると、彼らは言った。「あなたのなぞをかけて、私たちに聞かせてください。」
14:14 そこで、サムソンは彼らに言った。「食らうものから食べ物が出、強いものから甘い物が出た。」彼らは三日たっても、そのなぞを明かすことができなかった。
14:15 四日目になって、彼らはサムソンの妻に言った。「あなたの夫をくどいて、あのなぞを私たちに明かしてください。さもないと、私たちは火であなたとあなたの父の家とを焼き払ってしまう。あなたがたは私たちからはぎ取るために招待したのですか。そうではないでしょう。」
14:16 そこで、サムソンの妻は夫に泣きすがって言った。「あなたは私を憎んでばかりいて、私を愛してくださいません。あなたは私の民の人々に、なぞをかけて、それを私に解いてくださいません。」すると、サムソンは彼女に言った。「ご覧。私は父にも母にもそれを明かしてはいない。あなたに、明かさなければならないのか。」
14:17 彼女は祝宴の続いていた七日間、サムソンに泣きすがった。七日目になって、彼女がしきりにせがんだので、サムソンは彼女に明かした。それで、彼女はそのなぞを自分の民の人々に明かした。
14:18 町の人々は、七日目の日が沈む前にサムソンに言った。「蜂蜜よりも甘いものは何か。雄獅子よりも強いものは何か。」すると、サムソンは彼らに言った。「もし、私の雌の子牛で耕さなかったなら、私のなぞは解けなかったろうに。」
14:19 そのとき、主の霊が激しくサムソンの上に下った。彼はアシュケロンに下って行って、そこの住民三十人を打ち殺し、彼らからはぎ取って、なぞを明かした者たちにその晴れ着をやり、彼は怒りを燃やして、父の家へ帰った。
14:20 それで、サムソンの妻は、彼につき添った客のひとりの妻となった。

第15章

15:1 しばらくたって、小麦の刈り入れの時に、サムソンは一匹の子やぎを持って自分の妻をたずね、「私の妻の部屋にはいりたい。」と言ったが、彼女の父は、はいらせなかった。
15:2 彼女の父は言った。「私は、あなたがほんとうにあの娘をきらったものと思って、あれをあなたの客のひとりにやりました。あれの妹のほうが、あれよりもきれいではありませんか。どうぞ、あれの代わりに妹をあなたのものとしてください。」
15:3 すると、サムソンは彼らに言った。「今度、私がペリシテ人に害を加えても、私には何の罪もない。」
15:4 それからサムソンは出て行って、ジャッカルを三百匹捕え、たいまつを取り、尾と尾をつなぎ合わせて、二つの尾の間にそれぞれ一つのたいまつを取りつけ、
15:5 そのたいまつに火をつけ、そのジャッカルをペリシテ人の麦畑の中に放して、たばねて積んである麦から、立穂、オリーブ畑に至るまでを燃やした。
15:6 それで、ペリシテ人は言った。「だれがこういうことをしたのか。」また言った。「あのティムナ人の婿サムソンだ。あれが、彼の妻を取り上げて客のひとりにやったからだ。」それで、ペリシテ人は上って来て、彼女とその父を火で焼いた。
15:7 すると、サムソンは彼らに言った。「あなたがたがこういうことをするなら、私は必ずあなたがたに復讐する。そのあとで、私は手を引こう。」
15:8 そして、サムソンは彼らを取りひしいで、激しく打った。それから、サムソンは下って行って、エタムの岩の裂け目に住んだ。
15:9 ペリシテ人が上って行って、ユダに対して陣を敷き、レヒを攻めたとき、
15:10 ユダの人々は言った。「なぜ、あなたがたは、私たちを攻めに上って来たのか。」彼らは言った。「われわれはサムソンを縛って、彼がわれわれにしたように、彼にもしてやるために上って来たのだ。」
15:11 そこで、ユダの人々三千人がエタムの岩の裂け目に下って行って、サムソンに言った。「あなたはペリシテ人が私たちの支配者であることを知らないのか。あなたはどうしてこんなことをしてくれたのか。」すると、サムソンは彼らに言った。「彼らが私にしたとおり、私は彼らにしたのだ。」
15:12 彼らはサムソンに言った。「私たちはあなたを縛って、ペリシテ人の手に渡すために下って来たのだ。」サムソンは彼らに言った。「あなたがたは私に撃ちかからないと誓いなさい。」
15:13 すると、彼らはサムソンに言った。「決してしない。ただあなたをしっかり縛って、彼らの手に渡すだけだ。私たちは決してあなたを殺さない。」こうして、彼らは二本の新しい綱で彼を縛り、その岩から彼を引き上げた。
15:14 サムソンがレヒに来たとき、ペリシテ人は大声をあげて彼に近づいた。すると、主の霊が激しく彼の上に下り、彼の腕にかかっていた綱は火のついた亜麻糸のようになって、そのなわめが手から解け落ちた。
15:15 サムソンは、生新しいろばのあご骨を見つけ、手を差し伸べて、それを取り、それで千人を打ち殺した。
15:16 そして、サムソンは言った。「ろばのあご骨で、山と積み上げた。ろばのあご骨で、千人を打ち殺した。」
15:17 こう言い終わったとき、彼はそのあご骨を投げ捨てた。彼はその場所を、ラマテ・レヒと名づけた。
15:18 そのとき、彼はひどく渇きを覚え、主に呼び求めて言った。「あなたは、しもべの手で、この大きな救いを与えられました。しかし、今、私はのどが渇いて死にそうで、無割礼の者どもの手に落ちようとしています。」
15:19 すると、神はレヒにあるくぼんだ所を裂かれ、そこから水が出た。サムソンは水を飲んで元気を回復して生き返った。それゆえその名は、エン・ハコレと呼ばれた。それは今日もレヒにある。
15:20 こうして、サムソンはペリシテ人の時代に二十年間、イスラエルをさばいた。

第16章

16:1 サムソンは、ガザへ行ったとき、そこでひとりの遊女を見つけ、彼女のところにはいった。
16:2 このとき、「サムソンがここにやって来た。」と、ガザの人々に告げる者があったので、彼らはサムソンを取り囲み、町の門で一晩中、彼を待ち伏せた。そして、「明け方まで待ち、彼を殺そう。」と言いながら、一晩中、鳴りをひそめていた。
16:3 しかしサムソンは真夜中まで寝て、真夜中に起き上がり、町の門のとびらと、二本の門柱をつかんで、かんぬきごと引き抜き、それを肩にかついで、ヘブロンに面する山の頂へ運んで行った。
16:4 その後、サムソンはソレクの谷にいるひとりの女を愛した。彼女の名はデリラといった。
16:5 すると、ペリシテ人の領主たちが彼女のところに来て、彼女に言った。「サムソンをくどいて、彼の強い力がどこにあるのか、またどうしたら私たちが彼に勝ち、彼を縛り上げて苦しめることができるかを見つけなさい。私たちはひとりひとり、あなたに銀千百枚をあげよう。」
16:6 そこで、デリラはサムソンに言った。「あなたの強い力はどこにあるのですか。どうすればあなたを縛って苦しめることができるのでしょう。どうか私に教えてください。」
16:7 サムソンは彼女に言った。「もし彼らが、まだ干されていない七本の新しい弓の弦で私を縛るなら、私は弱くなり、並みの人のようになろう。」
16:8 そこで、ペリシテ人の領主たちは、干されていない七本の新しい弓の弦を彼女のところに持って来たので、彼女はそれでサムソンを縛り上げた。
16:9 彼女は、奥の部屋に待ち伏せしている者をおいていた。そこで彼女は、「サムソン。ペリシテ人があなたを襲ってきます。」と言った。しかし、サムソンはちょうど麻くずの糸が火に触れて切れるように、弓の弦を断ち切った。こうして、彼の力のもとは知られなかった。
16:10 デリラはサムソンに言った。「まあ、あなたは私をだまして、うそをつきました。さあ、今度は、どうしたらあなたを縛れるか、教えてください。」
16:11 すると、サムソンは彼女に言った。「もし、彼らが仕事に使ったことのない新しい綱で、私をしっかり縛るなら、私は弱くなり、並みの人のようになろう。」
16:12 そこで、デリラは新しい綱を取って、それで彼を縛り、「サムソン。ペリシテ人があなたを襲ってきます。」と言った。奥の部屋には待ち伏せしている者がいた。しかし、サムソンはその綱を糸のように腕から切り落とした。
16:13 デリラはまた、サムソンに言った。「今まで、あなたは私をだまして、うそをつきました。どうしたらあなたを縛れるか、私に教えてください。」サムソンは彼女に言った。「もしあなたが機の縦糸といっしょに私の髪の毛七ふさを織り込み、機のおさで突き刺しておけば、私は弱くなり、並みの人のようになろう。」
16:14 彼が深く眠っているとき、デリラは彼の髪の毛七ふさを取って、機の縦糸といっしょに織り込み、それを機のおさで突き刺し、彼に言った。「サムソン。ペリシテ人があなたを襲ってきます。」すると、サムソンは眠りからさめて、機のおさと機の縦糸を引き抜いた。
16:15 そこで、彼女はサムソンに言った。「あなたの心は私を離れているのに、どうして、あなたは『おまえを愛する。』と言えるのでしょう。あなたはこれで三回も私をだまして、あなたの強い力がどこにあるのかを教えてくださいませんでした。」
16:16 こうして、毎日彼女が同じことを言って、しきりにせがみ、責め立てたので、彼は死ぬほどつらかった。
16:17 それで、ついにサムソンは、自分の心をみな彼女に明かして言った。「私の頭には、かみそりが当てられたことがない。私は母の胎内にいるときから、神へのナジル人だからだ。もし私の髪の毛がそり落とされたら、私の力は私から去り、私は弱くなり、普通の人のようになろう。」
16:18 デリラは、サムソンが自分の心をみな明かしたことがわかったので、人をやって、ペリシテ人の領主たちを呼んで言った。「今度は上って来てください。サムソンは彼の心をみな私に明かしました。」ペリシテ人の領主たちは、彼女のところに上って来た。そのとき、彼らはその手に銀を持って上って来た。
16:19 彼女は自分のひざの上でサムソンを眠らせ、ひとりの人を呼んで、彼の髪の毛七ふさをそり落とさせ、彼を苦しめ始めた。彼の力は彼を去っていた。
16:20 彼女が、「サムソン。ペリシテ人があなたを襲ってきます。」と言ったとき、サムソンは眠りからさめて、「今度も前のように出て行って、からだをひとゆすりしてやろう。」と言った。彼は主が自分から去られたことを知らなかった。
16:21 そこで、ペリシテ人は彼をつかまえて、その目をえぐり出し、彼をガザに引き立てて行って、青銅の足かせをかけて、彼をつないだ。こうしてサムソンは牢の中で臼をひいていた。
16:22 しかし、サムソンの頭の毛はそり落とされてから、また伸び始めた。
16:23 さて、ペリシテ人の領主たちは、自分たちの神ダゴンに盛大ないけにえをささげて楽しもうと集まり、そして言った。「私たちの神は、私たちの敵サムソンを、私たちの手に渡してくださった。」
16:24 民はサムソンを見たとき、自分たちの神をほめたたえて言った。「私たちの神は、私たちの敵を、この国を荒らし、私たち大ぜいを殺した者を、私たちの手に渡してくださった。」
16:25 彼らは、心が陽気になったとき、「サムソンを呼んで来い。私たちのために見せものにしよう。」と言って、サムソンを牢から呼び出した。彼は彼らの前で戯れた。彼らがサムソンを柱の間に立たせたとき、
16:26 サムソンは自分の手を堅く握っている若者に言った。「私の手を放して、この宮をささえている柱にさわらせ、それに寄りかからせてくれ。」
16:27 宮は、男や女でいっぱいであった。ペリシテ人の領主たちもみなそこにいた。屋上にも約三千人の男女がいて、サムソンが演技するのを見ていた。
16:28 サムソンは主に呼ばわって言った。「神、主よ。どうぞ、私を御心に留めてください。ああ、神よ。どうぞ、この一時でも、私を強めてください。私の二つの目のために、もう一度ペリシテ人に復讐したいのです。」
16:29 そして、サムソンは、宮をささえている二本の中柱を、一本は右の手に、一本は左の手にかかえ、それに寄りかかった。
16:30 そしてサムソンは、「ペリシテ人といっしょに死のう。」と言って、力をこめて、それを引いた。すると、宮は、その中にいた領主たちと民全体との上に落ちた。こうしてサムソンが死ぬときに殺した者は、彼が生きている間に殺した者よりも多かった。
16:31 そこで、彼の身内の者や父の家族の者たちがみな下って来て、彼を引き取り、ツォルアとエシュタオルとの間にある父マノアの墓に彼を運んで行って葬った。サムソンは二十年間、イスラエルをさばいた。

第17章

17:1 エフライムの山地の出で、その名をミカという人がいた。
17:2 彼は母に言った。「あなたが、銀千百枚を盗まれたとき、のろって言われたことが、私の耳にはいりました。実は、私がその銀を持っています。私がそれを盗んだのです。」すると、母は言った。「主が私の息子を祝福されますように。」
17:3 彼が母にその銀千百枚を返したとき、母は言った。「私の手でその銀を聖別して主にささげ、わが子のために、それで彫像と鋳像を造りましょう。今は、それをあなたに返します。」
17:4 しかし彼は母にその銀を返した。そこで母は銀二百枚を取って、それを銀細工人に与えた。すると、彼はそれで彫像と鋳像を造った。それがミカの家にあった。
17:5 このミカという人は神の宮を持っていた。それで彼はエポデとテラフィムを作り、その息子のひとりを任命して、自分の祭司としていた。
17:6 そのころ、イスラエルには王がなく、めいめいが自分の目に正しいと見えることを行なっていた。
17:7 ユダのベツレヘムの出の、ユダの氏族に属するひとりの若者がいた。彼はレビ人で、そこに滞在していた。
17:8 その人がユダのベツレヘムの町を出て、滞在する所を見つけに、旅を続けてエフライムの山地のミカの家まで来たとき、
17:9 ミカは彼に言った。「あなたはどこから来たのですか。」彼は答えた。「私はユダのベツレヘムから来たレビ人です。私は滞在する所を見つけようとして、歩いているのです。」
17:10 そこでミカは言った。「私といっしょに住んで、私のために父となり、また祭司となってください。あなたに毎年、銀十枚と、衣服ひとそろいと、あなたの生活費をあげます。」それで、このレビ人は同意した。
17:11 このレビ人は心を決めてその人といっしょに住むことにした。この若者は彼の息子のひとりのようになった。
17:12 ミカがこのレビ人を任命したので、この若者は彼の祭司となり、ミカの家にいた。
17:13 そこで、ミカは言った。「私は主が私をしあわせにしてくださることをいま知った。レビ人を私の祭司に得たから。」

第18章

18:1 そのころ、イスラエルには王がなかった。そのころ、ダン人の部族は、自分たちの住む相続地を求めていた。イスラエルの諸部族の中にあって、相続地はその時まで彼らに割り当てられていなかったからである。
18:2 そこで、ダン族は、彼らの諸氏族全体のうちから五人の者、ツォルアとエシュタオルからの勇士たちを派遣して、土地を偵察し、調べることにした。それで、彼らに言った。「行って、あの地を調べなさい。」彼らはエフライムの山地のミカの家に行って、そこで一夜を明かした。
18:3 彼らはミカの家のそばに来、あのレビ人の若者の声に気づいた。そこで、そこに立ち寄り、彼に言った。「だれがあなたをここに連れて来たのですか。ここで何をしているのですか。ここに何の用事があるのですか。」
18:4 その若者は彼らに言った。「ミカが、かくかくのことを私にしてくれて、私を雇い、私は彼の祭司になったのです。」
18:5 彼らはその若者に言った。「どうぞ、神に伺ってください。私たちのしているこの旅が、成功するかどうかを知りたいのです。」
18:6 その祭司は彼らに言った。「安心して行きなさい。あなたがたのしている旅は、主が認めておられます。」
18:7 五人の者は進んで行って、ライシュに着き、そこの住民を見ると、彼らは安らかに住んでおり、シドン人のならわしに従って、平穏で安心しきっていた。この地には足りないものは何もなく、押えつける者もなかった。彼らはシドン人から遠く離れており、そのうえ、だれとも交渉がなかった。
18:8 五人の者がツォルアとエシュタオルの身内の者たちのところに帰って来たとき、身内の者たちは彼らに、どうだったかと尋ねた。
18:9 そこで、彼らは言った。「さあ、彼らのところへ攻め上ろう。私たちはその土地を見たが、実に、すばらしい。あなたがたはためらっている。ぐずぐずせずに進んで行って、あの地を占領しよう。
18:10 あなたがたが行くときは、安心しきっている民のところに行けるのだ。しかもその地は広々としている。神はそれをあなたがたの手に渡しておられる。その場所には、地にあるもので足りないものは何もない。」
18:11 そこで、ダン人の氏族の者六百人は武具を身に着けて、そこ、ツォルアとエシュタオルから旅立ち、
18:12 上って行って、ユダのキルヤテ・エアリムに宿営した。それで、その所はマハネ・ダンと呼ばれた。今日もそうである。それはキルヤテ・エアリムの西にある。
18:13 彼らはさらにそこからエフライムの山地へと進み、ミカの家に着いた。
18:14 そのとき、あのライシュの地を偵察に行った五人の者は、その身内の者たちに告げて言った。「これらの建物の中にエポデやテラフィム、彫像や鋳像があるのを知っているか。今あなたがたは何をなすべきかを知りなさい。」
18:15 そこで、彼らは、そちらのほうに行き、あのレビ人の若者の家ミカの家に来て、彼の安否を尋ねた。
18:16 武具を身に着けた六百人のダンの人々は、門の入口のところに立っていた。
18:17 あの地を偵察に行った五人の者は上って行き、そこにはいり、彫像とエポデとテラフィムと鋳像を取った。祭司は武具を身に着けた六百人の者と、門の入口のところに立っていた。
18:18 五人の者がミカの家にはいり、彫像とエポデとテラフィムと鋳像を取った。そのとき祭司は彼らに言った。「あなたがたは何をしているのか。」
18:19 彼らは祭司に言った。「黙っていてください。あなたの手を口に当てて、私たちといっしょに来て、私たちのために父となり、また祭司となってください。あなたはひとりの家の祭司になるのと、イスラエルで部族または氏族の祭司になるのと、どちらがよいですか。」
18:20 祭司の心ははずんだ。彼はエポデとテラフィムと彫像を取り、この人々の中にはいって行った。
18:21 そこで、彼らは子どもや家畜や貴重品を先にして引き返して行った。
18:22 彼らがミカの家からかなり離れると、ミカは家の近くの家にいた人々を集め、ダン族に追いついた。
18:23 彼らがダン族に呼びかけたとき、彼らは振り向いて、ミカに言った。「あなたは、どうしたのだ。人を集めたりして。」
18:24 すると、ミカは言った。「あなたがたは私の造った神々と、それに祭司とを取って行った。私のところには何が残っていますか。私に向かって『どうしたのだ。』と言うのは、いったい何事です。」
18:25 そこで、ダン族はミカに言った。「あなたの声が私たちの中で聞こえないようにせよ。でなければ、気の荒い連中があなたがたに撃ちかかろう。あなたは、自分のいのちも、家族のいのちも失おう。」
18:26 こうして、ダン族は去って行った。ミカは、彼らが自分よりも強いのを見てとり、向きを変えて、自分の家に帰った。
18:27 彼らは、ミカが造った物と、ミカの祭司とを取って、ライシュに行き、平穏で安心しきっている民を襲い、剣の刃で彼らを打ち、火でその町を焼いた。
18:28 その町はシドンから遠く離れており、そのうえ、だれとも交渉がなかったので、救い出す者がいなかった。その町はベテ・レホブの近くの谷にあった。彼らは町を建てて、そこに住んだ。
18:29 そして、彼らはイスラエルに生まれた自分たちの先祖ダンの名にちなんで、その町にダンという名をつけた。その町のもとの名はライシュであった。
18:30 さて、ダン族は自分たちのために彫像を立てた。モーセの子ゲルショムの子ヨナタンとその子孫が、国の捕囚の日まで、ダン部族の祭司であった。
18:31 こうして、神の宮がシロにあった間中、彼らはミカの造った彫像を自分たちのために立てた。

第19章

19:1 イスラエルに王がなかった時代のこと、ひとりのレビ人が、エフライムの山地の奥に滞在していた。この人は、そばめとして、ユダのベツレヘムからひとりの女をめとった。
19:2 ところが、そのそばめは彼をきらって、彼のところを去り、ユダのベツレヘムの自分の父の家に行き、そこに四か月の間いた。
19:3 そこで、彼女の夫は、ねんごろに話をして彼女を引き戻すために、若い者と一くびきのろばを連れ、彼女のあとを追って出かけた。彼女が夫を自分の父の家に連れてはいったとき、娘の父は彼を見て、喜んで迎えた。
19:4 娘の父であるしゅうとが引き止めたので、彼は、しゅうとといっしょに三日間とどまった。こうして、彼らは食べたり飲んだりして、夜を過ごした。
19:5 四日目になって朝早く、彼は出かけようとして立ち上がった。すると、娘の父は婿に言った。「少し食事をして元気をつけ、そのあとで出かけなさい。」
19:6 それで、彼らふたりは、すわって共に食べたり飲んだりした。娘の父はその人に言った。「どうぞ、もう一晩泊まることにして、楽しみなさい。」
19:7 その人が出かけようとして立ち上がると、しゅうとが彼にしきりに勧めたので、彼はまたそこに泊まって一夜を明かした。
19:8 五日目の朝早く、彼が出かけようとすると、娘の父は言った。「どうぞ、元気をつけて、日が傾くまで、ゆっくりしていなさい。」そこで、彼らふたりは食事をした。
19:9 それから、その人が自分のそばめと、若い者を連れて、出かけようとすると、娘の父であるしゅうとは彼に言った。「ご覧なさい。もう日が暮れかかっています。どうぞ、もう一晩お泊まりなさい。もう日も傾いています。ここに泊まって、楽しみなさい。あすの朝早く旅立って、家に帰ればいいでしょう。」
19:10 その人は泊まりたくなかったので、立ち上がって出て行き、エブスすなわちエルサレムの向かい側にやって来た。鞍をつけた一くびきのろばと彼のそばめとが、いっしょだった。
19:11 彼らがエブスの近くに来たとき、日は非常に低くなっていた。それで、若い者は主人に言った。「さあ、このエブス人の町に寄り道して、そこで一夜を明かしましょう。」
19:12 すると、彼の主人は言った。「私たちは、イスラエル人ではない外国人の町には立ち寄らない。さあ、ギブアまで進もう。」
19:13 それから、彼は若い者に言った。「さあ、ギブアかラマのどちらかの地に着いて、そこで一夜を明かそう。」
19:14 こうして、彼らは進んで行った。彼らがベニヤミンに属するギブアの近くに来たとき、日は沈んだ。
19:15 彼らはギブアに行って泊まろうとして、そこに立ち寄り、町にはいって行って、広場にすわった。だれも彼らを迎えて家に泊めてくれる者がいなかったからである。
19:16 そこへ、夕暮れになって野ら仕事から帰ったひとりの老人がやって来た。この人はエフライムの山地の人で、ギブアに滞在していた。この土地の者たちはベニヤミン族であった。
19:17 目を上げて、町の広場にいる旅人を見たとき、この老人は、「どちらへおいでですか。どちらからおいでになったのですか。」と尋ねた。
19:18 そこで、その人は彼に言った。「私たちは、ユダのベツレヘムから、エフライムの山地の奥まで旅を続けているのです。私はその奥地の者です。ユダのベツレヘムまで行って来ました。今、主の宮へ帰る途中ですが、だれも私を家に迎えてくれる者がありません。
19:19 私たちのろばのためには、わらも飼葉もあり、また、私と、妻と、私たちといっしょにいる若い者とのためにはパンも酒もあります。足りないものは何もありません。」
19:20 すると、この老人は言った。「安心なさい。ただ、足りないものはみな、私に任せて。ただ広場では夜を過ごさないでください。」
19:21 こうして彼は、この人を自分の家に連れて行き、ろばに、まぐさをやった。彼らは足を洗って、食べたり飲んだりした。
19:22 彼らが楽しんでいると、町の者で、よこしまな者たちが、その家を取り囲んで、戸をたたき続けた。そして彼らは、その家の主人である老人に言った。「あなたの家に来たあの男を引き出せ。あの男を知りたい。」
19:23 そこで、家の主人であるその人は彼らのところに出て行って言った。「いけない。兄弟たちよ。どうか悪いことはしないでくれ。この人が私の家にはいって後に、そんな恥ずべきことはしないでくれ。
19:24 ここに処女の私の娘と、あの人のそばめがいる。今、ふたりを連れ出すから、彼らをはずかしめて、あなたがたの好きなようにしなさい。あの人には、そのような恥ずべきことはしないでくれ。」
19:25 しかし、人々は彼に聞こうとしなかった。そこで、その人は自分のそばめをつかんで、外の彼らのところへ出した。すると、彼らは彼女を犯して、夜通し、朝まで暴行を加え、夜が明けかかるころ彼女を放した。
19:26 夜明け前に、その女は自分の主人のいるその人の家の戸口に来て倒れ、明るくなるまでそこにいた。
19:27 その女の主人は、朝になって起き、家の戸を開いて、旅に出ようとして外に出た。見ると、そこに自分のそばめであるその女が、手を敷居にかけて、家の入口に倒れていた。
19:28 それで、彼はその女に、「立ちなさい。行こう。」と言ったが、何の返事もなかった。それで、その人は彼女をろばに乗せ、立って自分の所へ向かって行った。
19:29 彼は自分の家に着くと、刀を取り、自分のそばめをつかんで、その死体を十二の部分に切り分けて、イスラエルの国中に送った。
19:30 それを見た者はみな言った。「イスラエル人がエジプトの地から上って来た日から今日まで、こんなことは起こったこともなければ、見たこともない。このことをよく考えて、相談をし、意見を述べよ。」

第20章

20:1 そこで、ダンからベエル・シェバ、およびギルアデの地に至るイスラエル人はみな、出て来て、その会衆は、こぞってミツパの主のところに集まった。
20:2 イスラエルの全部族、民全体のかしらたち、四十万の剣を使う歩兵が神の民の集まりに出た。
20:3 ——ベニヤミン族は、イスラエル人がミツパに上って来たことを聞いた。——イスラエル人は、「こんな悪い事がどうして起こったのか、話してください。」と言った。
20:4 殺された女の夫であるレビ人は答えて言った。「私は、そばめといっしょに、ベニヤミンに属するギブアに行き、一夜を明かそうとしました。
20:5 すると、ギブアの者たちは私を襲い、夜中に私のいる家を取り囲み、私を殺そうと計りましたが、彼らは私のそばめに暴行を加えました。それで彼女は死にました。
20:6 そこで私は、そばめをつかみ、彼女を切り分け、それをイスラエルの相続地の全地に送りました。これは、彼らがイスラエルの中で、みだらな恥ずべきことを行なったからです。
20:7 さあ、あなたがたイスラエル人のすべてよ。今ここで、意見を述べて、相談してください。」
20:8 そこで、民はみな、こぞって立ち上がって言った。「私たちは、だれも自分の天幕に帰らない。だれも自分の家に戻らない。
20:9 今、私たちがギブアに対してしようとしていることはこうだ。くじを引いて、攻め上ろう。
20:10 私たちは、イスラエルの全部族について、百人につき十人、千人につき百人、一万人につき千人をとって、民のための糧食を持って行かせ、民がベニヤミンのギブアに行って、ベニヤミンがイスラエルでしたこのすべての恥ずべき行ないに対して、報復させよう。」
20:11 こうして、イスラエル人はみな団結し、こぞってその町に集まって来た。
20:12 それから、イスラエルの諸部族は、ベニヤミンの諸族のすべてに人をやって言わせた。「あなたがたのうちに起こったあの悪い事は、何ということか。
20:13 今、ギブアにいるあのよこしまな者たちを渡せ。彼らを殺して、イスラエルから悪を除き去ろう。」ベニヤミン族は、自分たちの同族イスラエル人の言うことに聞き従おうとしなかった。
20:14 それどころか、ベニヤミン族は町々からギブアに集まり、イスラエル人との戦いに出て行こうとした。
20:15 その日、ベニヤミン族は、町々から二万六千人の剣を使う者を召集した。そのほかにギブアの住民のうちから七百人の精鋭を召集した。
20:16 この民全体のうちに、左ききの精鋭が七百人いた。彼らはみな、一本の毛をねらって石を投げて、失敗することがなかった。
20:17 イスラエル人は、ベニヤミンを除いて、剣を使う者四十万人を召集した。彼らはみな、戦士であった。
20:18 イスラエル人は立ち上がって、ベテルに上り、神に伺って言った。「私たちのため、だれが最初に上って行って、ベニヤミン族と戦うのでしょうか。」すると、主は仰せられた。「ユダが最初だ。」
20:19 朝になると、イスラエル人は立ち上がり、ギブアに対して陣を敷いた。
20:20 イスラエル人はベニヤミンとの戦いに出て行った。そのとき、イスラエル人はギブアで彼らと戦うための陣ぞなえをした。
20:21 ベニヤミン族はギブアから出て来て、その日、イスラエル人二万二千人をその場で殺した。
20:22 しかし、この民、イスラエル人は奮い立って、初めの日に陣を敷いた場所で、再び戦いの備えをした。
20:23 そしてイスラエル人は上って行って、主の前で夕方まで泣き、主に伺って言った。「私は再び、私の兄弟ベニヤミン族に近づいて戦うべきでしょうか。」すると、主は仰せられた。「攻め上れ。」
20:24 そこで、イスラエル人は次の日、ベニヤミン族に攻め寄せたが、
20:25 ベニヤミンも次の日、ギブアから出て来て、彼らを迎え撃ち、再びイスラエル人のうち一万八千人をその場で殺した。これらの者はみな、剣を使う者であった。
20:26 それで、すべてのイスラエル人は、全民こぞってベテルに上って行って、泣き、その所で主の前にすわり、その日は、夕方まで断食をし、全焼のいけにえと和解のいけにえを主の前にささげた。
20:27 そして、イスラエル人は主に伺い、——当時、神の契約の箱はそこにあった。
20:28 当時、アロンの子エルアザルの子ピネハスが、御前に仕えていた。——そして言った。「私はまた、出て行って、私の兄弟ベニヤミン族と戦うべきでしょうか。それとも、やめるべきでしょうか。」主は仰せられた。「攻め上れ。あす、彼らをあなたがたの手に渡す。」
20:29 そこで、イスラエルはギブアの回りに伏兵を置いた。
20:30 三日目にイスラエル人は、ベニヤミン族のところに攻め上り、先のようにギブアに対して陣ぞなえをした。
20:31 すると、ベニヤミン族は、この民を迎え撃つために出て来た。彼らは町からおびき出された。彼らは、一つはベテルに、他の一つはギブアに上る大路で、この前のようにこの民を打ち始め、イスラエル人約三十人を戦場で刺し殺した。
20:32 ベニヤミン族は、「彼らは最初のときのようにわれわれに打ち負かされる。」と思った。イスラエル人は言った。「さあ、逃げよう。そして彼らを町から大路におびき出そう。」
20:33 イスラエル人はみな、その持ち場を立ち、バアル・タマルで陣ぞなえをした。一方、イスラエルの伏兵たちは、自分たちの持ち場、マアレ・ゲバからおどり出た。
20:34 こうして、全イスラエルの精鋭一万人がギブアに向かってやって来た。戦いは激しかった。ベニヤミン族は、わざわいが自分たちに迫っているのに気がつかなかった。
20:35 こうして、主がイスラエルによってベニヤミンを打ったので、イスラエル人は、その日、ベニヤミンのうち二万五千百人を殺した。これらの者はみな、剣を使う者であった。
20:36 ベニヤミン族は、自分たちが打ち負かされたのを見た。イスラエル人がベニヤミンの前から退却したのは、ギブアに対して伏せていた伏兵を信頼したからであった。
20:37 伏兵は急ぎギブアに突入した。伏兵はその勢いに乗って、町中を剣の刃で打ちまくった。
20:38 イスラエル人と伏兵との間には、合図が決めてあって、町からのろしが上げられたら、
20:39 イスラエル人は引き返して戦うようになっていた。ベニヤミンは、約三十人のイスラエル人を打ち殺し始めた。「彼らは、きっと最初の戦いのときのように、われわれに打ち負かされるに違いない。」と思ったのである。
20:40 そのころ、のろしが煙の柱となって町から上り始めた。ベニヤミンは、うしろを振り向いた。見よ。町全体から煙が天に上っていた。
20:41 そこへ、イスラエル人が引き返して来たので、ベニヤミン人は、わざわいが自分たちに迫っているのを見て、うろたえた。
20:42 それで、彼らはイスラエル人の前から荒野のほうへ向かったが、戦いは彼らに追い迫り、町々から出て来た者も合流して、彼らを殺した。
20:43 イスラエル人はベニヤミンを包囲して追いつめ、ヌアから東のほうギブアの向こう側まで踏みにじった。
20:44 こうして、一万八千人のベニヤミンが倒れた。これらの者はみな、力ある者たちであった。
20:45 また残りの者は荒野のほうに向かってリモンの岩に逃げたが、イスラエル人は、大路でそのうちの五千人を打ち取り、なお残りをギデオムまで追跡して、そのうちの二千人を打ち殺した。
20:46 こうして、その日ベニヤミンの中で倒れた者はみなで二万五千人、剣を使う力ある者たちであった。
20:47 それでも、六百人の者は荒野のほうに向かってリモンの岩に逃げ、四か月間、リモンの岩にいた。
20:48 イスラエル人は、ベニヤミン族のところへ引き返し、無傷のままだった町をはじめ、家畜、見つかったものすべてを剣の刃で打ち、また見つかったすべての町々に火を放った。

第21章

21:1 イスラエル人はミツパで、「私たちはだれも、娘をベニヤミンにとつがせない。」と言って誓っていた。
21:2 そこで、民はベテルに来て、そこで夕方まで神の前にすわり、声をあげて激しく泣いた。
21:3 そして、彼らは言った。「イスラエルの神、主よ。なぜイスラエルにこのようなことが起こって、きょう、イスラエルから一つの部族が欠けるようになったのですか。」
21:4 翌日になって、民は朝早く、そこに一つの祭壇を築き、全焼のいけにえと和解のいけにえをささげた。
21:5 そこで、イスラエルの人々は、「イスラエルの全部族のうちで、主のところの集まりに上って来なかった者はだれか。」と言った。彼らがミツパの主のところに上って来なかった者について、「その者は必ず殺されなければならない。」と言って、重い誓いを立てていたからである。
21:6 イスラエル人は、その兄弟ベニヤミンのことで悔やんだ。それで言った。「きょう、イスラエルから、一つの部族が切り捨てられた。
21:7 あの残った者たちに妻をめとらせるにはどうすればよいだろうか。私たちは主にかけて、彼らに娘をとつがせないと誓ったのだ。」
21:8 ついで、彼らは言った。「イスラエルの部族のうちで、どこの者がミツパの主のところに上って来なかったのか。」見ると、ヤベシュ・ギルアデからは、ひとりも陣営に、その集まりに、出ていなかった。
21:9 民は点呼したが、ヤベシュ・ギルアデの住民はひとりもそこにいなかった。
21:10 会衆は、一万二千人の勇士をそこに送り、彼らに命じて言った。「行って、ヤベシュ・ギルアデの住民を、剣の刃で打て。女や子どもも。
21:11 あなたがたは、こうしなければならない。男はみな、そして男と寝たことのある女はみな、聖絶しなければならない。」
21:12 こうして、彼らはヤベシュ・ギルアデの住民のうちから、男と寝たことがなく、男を知らない若い処女四百人を見つけ出した。彼らは、この女たちをカナンの地にあるシロの陣営に連れて来た。
21:13 それから、全会衆は、リモンの岩にいるベニヤミン族に使いをやり、彼らに和解を呼びかけたが、
21:14 そのとき、ベニヤミンは引き返して来たので、ヤベシュ・ギルアデの女のうちから生かしておいた女たちを彼らに与えた。しかし、彼らには足りなかった。
21:15 民はベニヤミンのことで悔やんでいた。主がイスラエルの部族の間を裂かれたからである。
21:16 そこで、会衆の長老たちは言った。「あの残った者たちに妻をめとらせるにはどうしたらよかろう。ベニヤミンのうちから女が根絶やしにされたのだ。」
21:17 ついで彼らは言った。「ベニヤミンののがれた者たちの跡継ぎがなければならない。イスラエルから一つの部族が消し去られてはならない。
21:18 しかし、私たちの娘を彼らにとつがせることはできない。イスラエル人は、『ベニヤミンに妻を与える者はのろわれる。』と言って誓っているからだ。」
21:19 それで、彼らは言った。「そうだ。毎年、シロで主の祭りがある。」——この町はベテルの北にあって、ベテルからシェケムに上る大路の日の上る方、レボナの南にある。——
21:20 それから、彼らはベニヤミン族に命じて言った。「行って、ぶどう畑で待ち伏せして、
21:21 見ていなさい。もしシロの娘たちが踊りに出て来たら、あなたがたはぶどう畑から出て、めいめい自分の妻をシロの娘たちのうちから捕え、ベニヤミンの地に行きなさい。
21:22 もし、女たちの父や兄弟が私たちに苦情を言いに来たら、私たちは彼らに、『私たちのため、彼らに情けをかけてやってください。私たちは戦争のときに彼らのひとりひとりに妻をとらせなかったし、あなたがたも娘を彼らに与えませんでした。もしそうしていたら、あなたがたは、罪に定められたでしょう。』と言います。」
21:23 ベニヤミン族はそのようにした。彼らは女たちを自分たちの数にしたがって、連れて来た。踊っているところを、彼らが略奪した女たちである。それから彼らは戻って、自分たちの相続地に帰り、町々を再建して、そこに住んだ。
21:24 こうして、イスラエル人は、そのとき、そこを去って、めいめい自分の部族と氏族のところに帰って行き、彼らはそこからめいめい自分の相続地へ出て行った。
21:25 そのころ、イスラエルには王がなく、めいめいが自分の目に正しいと見えることを行なっていた。